ファウスト

“人間の魂はどうしたら満たされるのか?正直うまく感想がまとまりませんが、一度この映画を観たら、また観たくなってしまいます”

【あらすじ】

19世紀初頭、神秘的な森に囲まれたドイツの町。

哲学・法学・医学・神学とあらゆる学問を究めたファウストは、助手のワーグナーとともに、“魂”は人間のどこにあるのかを探求するため、助手のワーグナーとともに死体を解剖していました。

どんなに学問を極めても、ファウストの腹も心も満たされることはなく、とうとう研究費が底をつき、父の診療所へ金の普請に訪れますが、あっさり断れれてしまい、空腹を抱えて町をさまよいます。

ふとしたことで高利貸のマウリツィウス・ミュラーの家へ辿り着き、指輪を質に入れ金を借りようとします。

しかし、マウリツィウスは“金は貸さないが、別の形で力になろう”と言います。

金を借りられず気落ちしたファウスト家に帰ると、マウリツィウスが現れ、部屋にあった毒ニンジンのエキスを飲み干してしまいます。普通の人間であれば死んでしまうのに、なんともないマウリツィウスに興味を抱いたファウストは、彼とともに出かけます。

女達が集まる洗濯場で清楚で美しい女性マルガレーテに心奪われてしまいます。

そして、兵士たちが集う酒場を訪れます。そこでマウリツィウスは騒ぎを起こし、ファウストはマウリツィウスに握らされたフォークで兵士の1人を刺し殺してしまうのです。

逃げ出したファウストは、罪の意識に苛まれ、遺族に償いたいとマウリツィウスに申し出るが、死んだ兵士はマルガレーテの兄であったことを知り愕然とします。

バレンティンの葬儀に紛れ込んだファウストは、マルガレーテを慰めつつ、束の間の逢瀬を楽しみますが、マルガレーテから兄を殺したのかと問われ、事実を認めます。

それでもマルガレーテへの気持ちを抑えきれないファウストは、再びマウリツィウスを訪ね、一晩だけでもマルガレーテとともに過ごしたいと頼みます。

そんなファウストにマウリツィウスは、魂と引き換えにその望みを叶えると書かれた契約書を突きつけます。

マルガレーテのことで盲目的になったファウストは、その契約書に自らの血で署名します。

 

【映画を観て】

この映画は、ゲーテの著作“ファウスト”をソクーロフ監督たちが自由に翻案したストーリーです。

まずびっくりしたのは、画面が正方形なんですね。そして、自然の美しさや街の猥雑さが、とても不思議なタッチで、時には現実なのか幻想なのか妄想なのかわからなくなるような感じで作られています。

ハリー・ポッターやダークシャドウなどの映像をつくりだしてきた撮影監督のブリュノ・デルボネル氏の手腕にびっくりしました。

2時間半のわりと長い映画なのに、一瞬たりとも目が離せませんでした。

冒頭の死体の解剖のシーンはかなりエグい感じがしましたが、人間の魂はどこにあるかというのは、当時の学問や信仰がよく現れているし、人間の普遍的な問題だなと思いました。

マウリツィウスに導かれ、ファウストの魂が活性化し、そしてそれを引き渡さなければならなくなるというのにうまく繋げていると思います。

学問だけでは心が満たされないファウストが、マウリツィウスと行動をするようになると、彼はこれまで自分とは縁のない下世話なことだと思っていた、色恋沙汰や酒を飲んで騒ぐなどいう普通の人々が享受している快楽を少しずつ実感し、心がだんだん活気づいているかのようにみえます。

ファウストはマルガレーテと一夜を共にすることを魂と引換に契約し、ファウストの願いは実現します。しかし、終盤を観ていると本当にそれが彼の願いだったのか疑問に思うところもあります。

終盤、ファウストはマウリツィウスに高い岩山へ連れられてきます。そこでの彼はマルガレーテを助けたいと口にはしますが、彼の行動を観ていると学問の方も捨て切れないという感じもしました。

ファウストの究極の願いはマルガレーテと付き合うというよりも、自身の魂が満たされることなのではないかと思います。

だから、彼はマウリツィウスとの契約を保護にしようと彼を殺そうとしたのでしょうね。

もしかしたら、マルガレーテも兄や母の束縛から逃れようとマウリツィスと契約をしたのかもしれません。そう考えると、終盤の岩山でファウストが彼女を助けたいといい、マウリツィウスを殺そうとした理由も想像できます。

また、気になるのはファウストの弟子だったワーグナーの存在です。彼はファウストがマルガレーテを追い回す様子を影から監視していました。彼もそうしているうちにマルガレーテに惹かれたのでしょうね。

そして、研究から離れてしまったファウストを研究で超えることでマルガレーテの気を引こうとホムンクルスを創りだしたのではないかと思います。

しかし、そのホムンクルスの入ったガラス容器はマルガレーテによって壊されてしまいます。

もしかしたら、ワーグナーはこれまで人間が成し得なかった研究を確立したいとマウリツィスと契約を結んだのかもしれません。そしてホムンクルスが息絶えると同時に彼の魂も奪われたのではないかと思います。

恋で魂を満たそうとするファウストと、研究で魂を満たそうとするワーグナーはそういう意味では対照的な存在ですね。

ファンストの厳格で疲れた中年という感じも良いですし、マルガレーテの清楚で純朴で信仰深い感じも良かったです。

しかし、マウリツィウス役アントン・アダシンスキーの不思議で狡猾なキャラクターの塩害は見事でした。

ストーリーは不可解なことがたくさんあるように思います。しかし、そうしたことで観る人にいろんなことを想像させるようにソクーロフ監督はうまく作品を作りこんだのではないでしょうか。

感想を明確にまとめるのがとてもむずかしい映画だと思いますが、どういうわけかいくつかの場面が頭から離れず、時間が経つとまた観たくなってしまっています。

 

2012年10月27日 新潟・市民映画館シネ・ウインドにて鑑賞(11月09日まで上映)

おすすめ度:★★★★★5
音楽も重厚でよかったですね。

原題:Faust
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:アレクサンドル・ソクーロフ、マレーナ・コレノワ、ユーリー・アラボフ
原案:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
撮影監督:ブリュノ・デルボネル
製作・音楽:アンドレイ・シグレ
キャスト:ファウスト(ヨハネス・ツァイラー)、マウリツィウス(アントン・アダシンスキー)、マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)
2011年 ロシア作品

 

 

【リンク】
“ファウスト”公式サイト
ファウスト@ぴあ映画生活



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