アイアン・スカイ

“おバカな映画として秀逸ですが、ピリッと風刺が効いているところもいいです”

【あらすじ】

2018年。次期アメリカ大統領選挙の対策として大統領の勅命により、アポロ17号以来となる有人月面着陸プロジェクトが行われました。

月に送り込まれた黒人ファッションモデルのジェームズ・ワシントンは、巨大な建造物を発見し、第二次世界大戦の敗戦からこの地に逃れてきたナチス・ドイツの残党たちによって拉致されてしまいます。

新総統コーツフライシュのもと、地球帰還を目指していたナチスは、ワシントンが持っていたスマートフォンの処理能力が自分たちが開発したコンピューターをはるかに凌駕していることに衝撃を受け、これがあれば、最終兵器“神々の黄昏”号を完成し稼働させることができると地球潜入を計画します。

ワシントンを案内役に、次期総統候補と言われる野心家の将校クラウス・アドラー、彼のフィアンセで美貌の地球学者レナーテ・リヒターが円盤に乗って月を出発。

米国との同盟によって総統の座を奪う野心を抱いたクラウスは、ニューヨークに降り立つと、大統領直属の広報官ヴィヴィアン・ワグナーを誘拐し、大統領との面会を要求。

クラウスのカリスマ性とレナーテの理想主義が大衆の心を掴むと確信したヴィヴィアンにより、2人はたちまち大統領の敏腕パブリシストとして辣腕を振るい、大統領の人気は高まっていく。

数ヵ月後、ホームレスとなったワシントンに再会したレナーテは、彼の説得によってナチズムの危険性とクラウスの野望に気付く。

その頃、クラウスの裏切りを知ったコーツフライシュ総統は、宇宙艦隊を引き連れて地球攻撃に向かっていた。

大統領によってアメリカ宇宙軍指揮官に任命されたヴィヴィアンは、密かに建造していた宇宙戦艦ジョージ・W・ブッシュ号をナチス艦隊に向けて発進させ、ナチスと国連軍の戦いが始まる。

 

【映画を観て】

◎大真面目なのに、ツッコミどころ満載の“おバカ映画”

ここで笑いを取ってやろうという作為を全く感じさせることなく、登場人物も演出もシリアスなのにツッコミどころが満載なところがおバカさを引き立てています。

ヒトラーが死んで70年以上経ち、現在の総統はコーツフライシュなのに、ナチ党員たちはみんな“ハイル・ヒトラー”と叫んでいる。

戦いでピンチに陥っているのに最中にナチス・ドイツ時代の国家が流れると、直立不動で敬礼する。

クラウスとレナーテはお互いのいうことを聴かせる最終手段が無理やり濃厚なキスをする。

レナーテがエアロックから普通の服のままされそうになった時に、制服が乱れて下着が顕になる。

月面のナチスと地球は行き来を絶っているのに、なぜレナーテの地球学はどうやって研究されているのか?

地球にやってきたばっかりのクラウスがいきなりアメリカで車を運転しちゃうとか、交通ルールは知ってるのか?

ワシントンとレナーテは“神々の黄昏”号の完成を阻止しようと地球からナチスの要塞に潜入するのですが、なんの妨害もなくサラッと侵入しちゃうとか。

広報官のワーグナーがいきなり軍の指揮官になっちゃうとか。

クラウスはレナーテと揉みあって命を落とすのですが、その最後はまさかって感じです。

ツッコミどころ満載なのに、極めてシリアスにやっているところがすごい。

 

◎月面のナチスの世界観はなかなか面白い。

月面で生活できているのに、メカニックやファッションは1940年代のナチス・ドイツそのままという感じです。そんなところが隔絶された世界で生活しいるという雰囲気をもり立ててますね。

宇宙服はナチスの軍服にガスマスクをつけたようなデザインだったり、彼らが生活する要塞が上から見るとカギ十字になっているというのもなかなか面白いと思います。

自動車やオートバイや機関車がエンジン音をたてて走っているって、どういうエンジンなんだろう?って不思議に思います。

彼らが作ったコンピューターは本当に1940年代のままのものなのに、あれだけ大規模な宇宙空母や円盤を飛ばしてしまうギャップがすごい。

宇宙船や円盤のデザインは歯車がごてごてと組み合わさって動いていたりで、いかにも当時のドイツっぽい感じがします。

 

◎オバカなだけじゃなく、世界情勢もピリッと風刺

まず冒頭のアメリカの宇宙船が月面に着陸するシーンですが、着陸するやいなや次期大統領の選挙キャンペーンの垂れ幕をおろしちゃうことに、クルーがほんとにやるのか?っていうのは金に物言わすみたいなところが現れていると思います。

そして、ナチスは月面にヘリウム3というエネルギーを備蓄しているのですが、これはアメリカの数十年分のエネルギーをまかなえるということです。

結局“神々の黄昏”号が沈黙した後、そのヘリウム3の存在が国連であらわになり、アメリカが月はアメリカのものだと言い出した途端、核ミサイルをバンバン撃ちあう世界戦争が勃発し、挙句の果てに月がかけてしまうとか。

アメリカ軍の戦艦がジョージ・W・ブッシュと名付けているところアタリも、イラクの戦争を風刺してるように感じます。

結局資源をめぐった戦争はアメリカが発端になっているところなんかは、それとなく世界情勢を風刺していますね。

そして、一番平和なのは戦争を否定し、理想主義を唱えるレナーテと、彼女とお互いに気持ちを通わせるワシントンだというのがこの映画の一つのメッセージのようにも感じます。

レナーテ役のユリア・ディーツェはなかなかの美人で、有望株かもしれないですね。

 

2012年10月24日 ユナイテッド・シネマ新潟にて鑑賞

おすすめ度:★★★★★
約1億円の制作費をカンパで集めるとか、続編が予定されているとか、次回作も楽しみです。

原題:Iron Sky
監督:ティモ・ブオレンソラ
脚本:マイケル・カレスニコ、ティモ・ブオレンソーラ
キャスト:レナーテ・リヒター:ユリア・ディーツェ、クラウス・アドラー:ゲッツ・オットー、クリストファー・カービイ:ジェームズ・ワシントン、ヴィヴィアン・ワグナー:ペータ・サージェント、大統領:ステファニー・ポール、ティロ・プリュックナー、マイケル・カレン、ウド・キア(新総統コーツフライシュ)ほか
2012年 フィンランド・ドイツ・オーストラリア作品

 

 

【リンク】
“アイアン・スカイ”公式サイト
アイアン・スカイ@ぴあ映画生活
象のロケット

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