ヴィダル・サスーン

“自分のルーツを見つめなおし、そこからできることをやっていけば、必ず成功する。-Vidal Sassoon”

【あらすじ】

1928年生まれのヴィダルは孤児院で少年時代を送った後、14歳の時に美容師に弟子入りする。

その後、イスラエルの独立時に兵士として参加。

帰還後は、有名美容師のレイモンドの元で修行を積んで腕を上げ、1954年にボンド・ストリートに自分のサロンをオープンする。

試行錯誤の末、オリジナリティあふれるカットを生み出したヴィダルは、スウィンギング・ロンドンを代表するヘア・スタイリストになっていく…。
そんな彼の経歴を時系列で追い、関係者へのインタビューを合間に織り込んでいくドキュメンタリーです。

 

【映画を観て】

◎ヘアスタイルだけじゃなくて、ヴィダル自身がカッコイイ!

ヴィダル・サスーンは2012年5月に84歳で亡くなりました。この映画でインタビューに答えるヴィダルは81歳です。

頭は白髪で、歳相応のシワができていたりしても、表情、目の輝き、発する言葉、引き締まった身体。全身から若々しさというか生き生きしたオーラがあふれんばかりです。

映画は1960年代に彼がファイヴ・ポイント・カットと呼ばれるヘア・カットの方法論を確立するあたりの映像や、アメリカのテレビ番組に出演していた頃の映像がふんだんに使われていますが、ヴィダル自身がシャープでスタイリッシュな感じがしてとにかくカッコ良かったです。

 

◎ファッションの世界を変えたヘアドレスは今でもカッコイイ!

ヴィダルが生み出したヘアスタイルはエッジがきいていて、アンシンメトリーなヘアスタイルは主張が強すぎると、か頭いくつか抜きん出ている綺麗な人にだけ似合うのではないかと思えるかもしれません(どちらかと言えば自分はこういう方が好みだったりします)。

でも彼のヘアスタイルの発想はそういうものではないのです。今でも斬新なヘアスタイルな感じがしますが、このヘアスタイルは1960年代に確立されたものなのです。

なぜ、50年も前に確立されたヘアスタイルが今でも通用するのかといえば、ヴィダルが単に流行りの“形を模倣”するのではなく、どうすれば一人ひとり異なるのお客さんの頭の形や骨格、髪の流れにあったヘアスタイルを考えて、それを形にしているにするという方法論を確立したからなのだと思います。

また、マリー・クヮントがデザインした服と、ヴィダルの産みだしたヘアスタイルの融合は、1960年台にファッションに革命を起こすだけではなく、女性のあり方を開放的かつ個性を主張する方向へ導いていったようにも感じます。

美容院に行く時などはファッション雑誌やヘアカタログを見て、こんなふうにして欲しいと美容師に注文する人も多く、美容院で仕上がったときはいいかもしれませんが、ちょっと時間が経つと失敗だったなぁと感じたり、ヘアスタイルを保つのが大変だったりする人も多いのではないかと思います。

ファッション雑誌やヘアカタログなんかを見て悩んだり、髪型をキープするのに毎日途方も無い労力と時間を使うくらいなら、ヴィダルのお店に行って“お任せするわ”と言ったほうが納得がいき、手入れも楽なヘアスタイルを手に入れることができるのでしょうね。(まあ、料金と待ち時間がどれほどのものかは知りませんが)

 

◎プロ意識がとても強い

ヴィダルはお客さんの注文を受け入れるということはほとんどないようでした。彼はその人の好み云々よりも自分の感覚からどんなヘアスタイルがその人に一番合うかを感性と経験から提案して形にしていくところが全然違うと思うんです。

ヴィダルがお客さんの髪をカットしていくシーンで注目するのは、彼の発想やテクニックもさることながら、いかに自分のアイデアをお客さんに伝えているかです。

彼は当時の美容界のカリスマと言われたレイモンドの店に弟子入りしたいといった時に、“下町なまり”がなおれば店に入れてやると門前払いをくらいました。

そこでヴィダルは3年間ヴォイス・トレーナーのところでなまりを直すだけじゃなく、人を引き込む話し方も身につけたそうです。そのことはレイモンドの店に入れたことだけではなく、彼のアイデアを人々に伝えるための大きな武器になったと思います。

普通の人なら“言葉を直してこい”と言われて門前払いを食らったら、“そんなの無理だよ”と妥協できる別の所を探すでしょう。しかしヴィダルが目的を果たすために学ぶ姿勢を常に持ち続けたことも成功に結びついているかもしれませんね。

◎誰でもより高いところへ行ける
この記事の冒頭に掲げた“自分のルーツを見つめなおし、そこからできることをやっていけば、必ず成功する。”の一文は、この映画のラストでヴィダルが語った言葉です。

孤児院に預けられた彼はアイデンティティーを確立する手段として、ヘアドレスの世界を選択しました。
彼はユダヤ系の人で、自分のルーツを探ろうと1948年にイスラエルの戦争に加わりました。
そのとき砂漠と星空を見て毎日のように自分の人生について考え、自分にはヘアドレスしかないと確信を得たということです。
セレブやカリスマは誰でもなれるものではないですが、彼のこの言葉は今より少しでも高いステージへ行きたい、もっと自分らしい生き方をしたいと思う人を勇気づけてくれると思います。
◎キレのいい映像
こうしたファッショナブルなものを扱うドキュメンタリーは、いかにオシャレに映画を構成するかによって作品の出来が大きく左右されると思います。
ヴィダル本人や関係者のインタビュー、過去の映像やその時々の時代を表す映像が、テンポよく構成されていて、エンターテインメントとしても十分に楽しめる作品だったと思います。

2012年10月13日 新潟・市民映画館シネ・ウインドにて鑑賞(10月26日まで上映)

おすすめ度:★★★★☆
こういう人を見ちゃうと、バラエティ番組なんかに登場するカリスマ◯◯とかなんちゃってセレブとか、ちゃんちゃらオカシイって感じになるよ。

 

原題:Vidal Sassoon: The Movie
監督:クレイグ・ティパー
プロデューサー:マイケル・ゴードン、ジャッキー・ギルバート・バウアー
アートディレクター:スティーヴ・ハイエット
脚本:へザー・ゴードン
キャスト:ヴィダル・サスーン、マイケル・ゴードン、レイモンド・ベッソーネ、マリー・クヮント、グレイス・コディントン ほか
2010年 アメリカ作品

 

 

【リンク】
“ヴィダル・サスーン”公式サイト
ヴィダル・サスーン@ぴあ映画生活

「ヴィダル・サスーン」への2件のフィードバック

  1. 面白そうな映画ですね。
    ヴィダル・サスーンは、素晴らしい人だったのだと思います。
    こういう洗練されたヘアスタイルを見るのは楽しいですね。

    1. > 瑠梨さん

      コメントありがとうございます。
      洗練されたファッションを産みだしたこともすごいですが、この映画ではヴィダル自身の仕事に対する姿勢とか生き方なんかは、平凡な僕達でも勇気づけられますね。
      流行は繰り返すとはいえ、ここまで普遍性のあるものを創りだしたって本当にすごいですよね。

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