ヴァンダル画廊街の奇跡

【あらすじ】

戦争の時代が過ぎ去り、世界からは国境がなくなり、一つの政府により統一されます。しかし、戦争に関連しそうな芸術は“プロパガンダ撤廃令”によって厳しく規制され、表現する事もその複製を所持することも許されない世界となりました。

しかし、とある街の建物に突如として規制対象となっている名画が描かれるという事件が起こります。

このアート・テロリストは絵とともに“Der Kunst Ihre Freiheit!(芸術に、その自由を!)”と書き残していきます。そんな彼らを人々は“ヴァンダル(=破壊者)”と呼んでいます。

少女“エナ”は、亡き父が言っていた“人は誰もが、心のなかに一枚の絵を持っている。”と言う言葉を信じて、また、目で見たものを写真のように記憶する“転写眼”の能力を発揮し、ヴァンダルの中心人物としてアート・テロを行うのです。

彼女は父の友達であったサイボーグ“ハルク”と行方不明となった母親の会社が開発したAIとともに行動を共にします。

エナはハルク達とともに、父親が死刑となった真相と、彼が最後に描いた絵を追い求めます。

 

【感想】

誰かの心のなかにある絵を再現し、世界を変えようというテーマは面白い。

各話のクライマックスは一見はしょっているような感じもしますが、余韻を強く残していて読後感がとてもさわやかな感じがします。

もうちょっとテーマになる絵の云われやどういうところが規制対象になったのかなど触れられているともっと良かったと思います。

デビュー作ということですが、言葉が丁寧に選ばれていて、文章も綺麗だと思います。

一瞬にして街の中に現れた絵によって、人々が心の輝きを取り戻す瞬間は美しいと思います。

エナが父親の最後の絵を街に出現させたところやロフマットがエナに一枚の絵を渡すところは感動的でした。

意外と早く父親の死の真相が明らかになりましたが、母親の行方を王展開になるのでしょうか?絵画という極めてアナログな題材に、AIやサイボーグが絡む設定は面白い。

また、ヴァンダルを追う2人のキャラクターもいいと思います。とぼけた感じでありながらも何か特別なことを知っていそうなゲティスバーグの言動や、ヴァンダルを取り締まることが本当に正しいことなのか疑いを持ち始めるエリートコースのカッツェの心変わりには今後注目ですね。

 

2012年10月05日読了
★★★★★

ヴァンダル画廊街の奇跡
美奈川護 (著), 望月朔 (イラスト)
アスキー・メディアワークス 電撃文庫
2010年02月10日発売

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