ローマ法王の休日

“無理なものは無理というにも勇気が必要

【あらすじ】 ローマ法王が逝去し、その後継の選出のため世界中から108人の枢機卿が集められ、互選による選挙が始まりました。

システィーナ礼拝堂の前には何千、何万人という人がつめかけ、何日もの間新しい法王から祝福を受けようと待ち構えています。

そして、108人のうちの一人メルヴィルが法王に選ばれ、礼拝堂のバルコニーで、信者に就任の挨拶と祝福をしようというとき、メルヴィルは重圧から突如心身の調子を悪くしてしまいます。

医者の診断は異常はなく、有名なセラピストが礼拝堂に呼ばれ、メルヴィルの治療に取り組みますが、いくつかの話題にふれてはいけないという厳しい制約のため治療が進みません。

メルヴィルは外でセラピストの治療を受けたほうがいいということになり、礼拝堂の外に出ますが、同行した教会の人々のすきを見て失踪します。

そして、教会の広報担当はこれが明るみに出ないようにあれやこれやと偽装工作をしかけるのでした。

【映画を観て】

恥ずかしいことにローマ法王が選挙で選ばれるというのを知ったのは初めてでした。

そして、僕がイメージする選挙は、候補者が何人かいて、それぞれがやる気マンマンで地位につこうと競うというイメージでしたが、ここでの選挙は誰もが“自分だけは選ばれないように”と神に祈るというのがおかしいですよね。

メルヴィルが選挙で選ばれ、法王となることを受け入れることを宣誓を求められたときに、メルヴィルは自分には無理だと言おうとしますが、周りの枢機卿達が聖歌を歌って祝福し、もう後に引けないような空気を作り出してしまうのは、集団による無言の脅迫ともいえると思います。

枢機卿というカトリック教徒の第二の地位といえば聖人君子のように見えますが、さすがにいろいろな権力争いを制してきたのでしょうから、あざといところもあるのでしょうね。

メルヴィルは教会でセラピストの診察を受けますが、法皇となった今“名前すら訊ねてはいけない”とまでの制約を受け、セラピストもメルヴィルの心を癒すことが出来ず、またメルヴィルも苦しい胸の内を打ち明けることが出来ずにいます。

一見善良そうな枢機卿たちからの無言の圧力や、格式にこだわるあまり取り繕うばかりに常に監視され行動を規制されるなどで自由を奪われるような状況がメルヴィルを押しつぶそうとしているかのように感じます。

お付きの者たちの前から姿をくらまし“見知らぬ老人”となったメルヴィルに街の人々はごくごく普通に接します。お年寄りには親切にしようという風潮が根付いていることもあるのか、メルヴィルに対して作為のない素朴な親切が彼に人間性をあらためて感じさせているのではないかと思います。

街をあてどなくさまようメルヴィルは、チェーホフの戯曲を練習しているところを訪れます。それが、メルヴィルの思い出にあるチェーホフの戯曲に結びつくのでしょう。

残念ながらこの戯曲のことを全く知らないので、この戯曲がストーリーやメルヴィルの人生や彼の置かれた状況とどのように関わりがあるのかはよくわかりませんでした。(セリフを注意深く聞いていれば少しは分かったかもしれません)

また、終盤はこの戯曲の本番の最中に枢機卿たちがメルヴィルの身柄を確保しようと劇場に現れ、メルヴィルは失踪を諦め教会に戻ります。

観ている自分は気分もリフレッシュしたので、法王の責務を全うしようとするのかと期待していましたが、見事にここで裏切られてしまいました。

ローマ法王になれば地位や名声は得られるでしょうが、その代償に常に重圧がのしかかり、あらゆる自由が奪われる人生となるのでしょうね。

メルヴィルはそのことよりも心の自由を選択したのだと思います。そして自分の気持に嘘をつかずに地位を捨てるのはとても勇気のいることだったと想像します。

メルヴィルの姿を観ていて、とある国の政治家たちを思い出してしまいましたよ。それにふさわしい能力があるとも思えないのに、自分や政党の面目を保つためにその地位にしがみつこうとあがいている様子は情けない。

 

2012年09月07日 KBCシネマ1・2にて鑑賞
おすすめ度:★★★3.5
とある事情で福岡にやってきました。途中道を間違えてしまい、上映開始に遅れそうだったので自分としてはかなり長い時間走って席についた途端上映が始まりました。汗びっしょりで息もあがっていたので、落ち着いて観ていなかったのかもしれません。

原題:HABEMUS PAPAM
監督:ナンニ・モレッティ
脚本:ナンニ・モレッティ 、フランチェスコ・ピッコロ 、フェデリカ・ポントレモーリ
出演:ミシェル・ピッコリ、イェジー・スツール、レナート・スカルパ、ナンニ・モレッティ
2011年 イタリア、フランス作品

【リンク】
“ローマ法王の休日”公式サイト
ローマ法王の休日@ぴあ映画生活

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