神様のメモ帳5

ニート探偵アリスの助手でニート予備軍の高校生ナルミが夏休みが終わリまでに遭遇したいつもよりちょっとライトな感じの事件を書き留めた短編集です。

【はなまるスープ顛末】

ナルミは助手として、ニート探偵アリスのパシリに呼びつけられては罵倒されています。

そんな頃ナルミがアルバイトをしているラーメンはなまるには、サングラスをかけ、ラーメンを頼んでも一口だけ食べて代金はちゃんと払っていつのまにか帰るという不思議なお客が現われます。

マスターのミンさんは、うちのラーメンがそんなに不味いのかと新しいスープを作るからナルミに泊まり込むように言います。

スープ作りの最中深夜ミンさんがシャワーを浴びに行った頃、ナルミはうつらうつらとしてしまい、その間に何者かが忍び込みミンさんが胸に巻いているさらしが盗まれるのです。

そしてニート探偵団の祭りが始まり、はなまるやミンさんの家のあちこちに監視カメラをつけたり、窓のセキュリティを強化して、警備に当たります。

ニート探偵団達はミンさん宅の侵入者(=下着メーカーの開発部長)を取り押さえますが、本当の犯人がもう一人いるというトリックがなかなか面白いです。

開発部長は確かにミンさんを隠し撮りしてその写真を送りつけてきたり、ストーカーまがいの事をしていましたが、その理由やミンさんの無防備さはなんか笑えます。

ミンさんの父親ははなまるを開店しましたが、しばらくして突然行方不明になったようです。ミンさんのスープ作りは父親の味を求めていたものです。

でも、もう親父とは関係ないとか言いながらも、唯一家の合鍵を持っている父親のため玄関には触らせないというミンさんの気持ちもちょっといいですよね。

 

【探偵の愛した博士】

ミンさんの高校の同級生友造がやっている酒屋で、異物混入の事件が起きます。

友造の店の隣には、大型スーパーができてしまい、そこの店長は友造の店の敷地を駐車場にしたいので売って欲しいとしつこく頼みにやってくるのでした。

友造は若くして父親を亡くし、店を継いだのですが、母親は友造に早く結婚して落ち着いて欲しいと思っているようですし、店をたたむのも仕方ないような感じです。

しかし、友造が付き合っている人が、大型スーパーを経営する会社の令嬢だということが分かり、事件は動き出します。

「貴方にふさわしい一本の酒」をと世界各地から珍しい酒を個人輸入して売っている友造には根強い客がついています。これは親父さんから引き継いだこだわりで、友造自身も楽しんでやっているみたいです。隣にできた大型スーパーは土地というより、友造たちにテナントに入ってもらってそのノウハウで売上を伸ばしたいようでした。

早く身を固めて、母親に楽をさせてやりたいという友造と、こんな店たたんでもいいから早く幸せになてくれという母親のちょっとしたスレ違いから生まれたような事件ですが、人情味があってよかったですね。

でもなんだかんだ言って、アリスはドクターペッパーがフルラインナップしているこの店を潰したくなかっただけなんじゃないかw

 

【大バカ任侠入門編】

平坂組の組長四代目が怪我で入院しているときに、組が事務所に借りているビルの大家さんの娘さんが誘拐されます。

しかし、身代金を要求する脅迫電話がなぜか四代目不在の組の事務所にかかってきます。

それを組員の電柱はアリスが誘拐されたと勘違いし、大騒ぎとなります。

大家さんの娘さんは大家さんを介護するため家に待機しながら仕事ができて、稼ぎになるデリヘル嬢をやっています。しかし、大家さんに心配をかけたくないので、ナイショですし、近々成功している実業家と結婚して、ビルの1Fに北欧雑貨店を開こうとしています。

電柱は電話で”ベッドの上で仕事”と訊いて、すぐアリスのことを想像し、アリスが誘拐されたという事になってしまうのは笑えます。

平坂組の連中とおおらかに話しをする大家さんの様子や、大家さんにも娘さんにも良くしてもらっているからって、馬鹿正直に仁義を通そうとする電柱や岩男たちの張り切り方が面白いですよね。

そして、犯人グループの一人に対して勘で賭けに出るナルミの直感力は相変わらずの持ち味でした。

 

【あの夏の二十一球】

ニート探偵団の少佐やナルミはゲームセンター西村に通い、自分が作った野球チームをネットで対戦させるゲームにハマっていました。

しかし、経営者の西村のところには、以前テツたちの賭けマージャンをしていたヤクザの根本が来て、店をウルように脅していました。

根本はなぜかネットで対戦する野球ゲームに嫌悪感を抱いていて、ナルミ達と実際の野球で勝負をすることになってしまいます。

たまにはニート探偵団の連中も体を動かして汗をかくのもいいよね。

グラウンドでお互いナルミに好意を持っている彩香とメオの遭遇はどうなるかと思いましたよ。

そして、アリスが打席にたって、振り逃げするとはビックリでした。

結局もと高校球児の西村も根本も、野球から離れて今の商売をしているのだけど、どこかで夢は捨てられないというところがまた、ニートらしからぬ話に華を添えてますね。

また、野球の描写がとても細かく、筆者は野球のことも詳しいのだなと感心しました。

 

2012年08月18日読了
★★★★★
何気に彩香がナルミにサラっというセリフが結構きついよねw

神様のメモ帳〈5〉
杉井 光 (著), 岸田 メル (イラスト)
アスキー・メディアワークス 電撃文庫
2010年05月10日発売

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