“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店 5

“アンティーク”と呼ばれる不思議な力を持つものにまつわる人間模様を描いた短編集です。

4編収録はいつものスタイルですが、この巻では“希望”“言葉”“本音”がどことなくつながっているちょっと変わった構成です。

【幸運】

“何かを代償に自分の幸運度を上げる”能力を持ったバングルを手に入れた女子高生の物語です。

バングルにはいろんな種類があるようで、例えば自分に触れた人の幸運を自分のものにしてしまうのも、自分の幸運を人に譲ればその見返りにさらに大きな幸運がやってくるもの、自分の未来の幸運を前借りして今の自分に幸運をもたらすものなどです。

付喪堂骨董店(つくもどうこっとうてん)でアルバイトをしている高校生の来栖 刻也は、学校から貸し出されたパソコンを持ってきました。

店主の摂津 都和子とアルバイト仲間の舞野 咲とネットサーフィンをしていて、もしかするとアンティークかもしれないというバングルの画像が乗ったブログを見つけ、その管理人を追います。

物語は刻也の視線、バングルを持っている女子高生の目線で交互に描かれます。

しかし、セクションごとの事象の整合がちょっとずつずれていて、読んでいるとなんとなく違和感を持ってしまいます。

その違和感の原因はバングルの持ち主は双子の姉妹で、姉と妹それぞれが性質の違う幸運を呼ぶバングルを持っていたということです。そして、一人はそれがアンティークだと知っていて、もう一人は何も知らなかったということです。

見た目が同じ姉妹と特性の違うバングルによる混乱が招く終盤はなかなか読み応えがありました。

刻也が女子高生を店に連れてきたり、学校帰りに女の子を尾行したりということに嫉妬する咲も可愛らしいです。

そして、終盤で登場した新キャラは謎めいた姉妹店などと関係があるのか気になりますね。

 

【希望】

世界の悪意が詰め込まれ、蓋を開けると災厄があふれだすと言われる壺にまつわる物語です。

店のオーナー都和子が“災厄の壺”を買い付けてきて、その謎を調べようとします。その翌日刻也がアルバイトにやってくると、都和子と咲の姿が見当たりません。刻也は2人の失踪と災厄の壺が何か関係があるのではないかと、残された文献などを調べていくうちに、災厄の壺に隠された真実に近づいていき、壺に飲み込まれてしまいます。そこで刻也は店の二人と再会するとともに、一人の巫女と出会います。

一族を守るための口減らしの風習がいびつな信仰となり、その犠牲になった“闇の子”の憎しみだけではなく、それが暴かれることに恐怖してきたことそのものが災厄なのではないかと思います。

巫女が産んだ闇の子と普通の赤ん坊に違いはないということを知ってしまったことから、彼女は自分の子が愛され幸せになることを願うとともに、闇に葬られてきた闇の子の母親になろうという巫女の母性は感動的です。

 

【言葉】

前の話の続きで、巫女から逃がされた赤ん坊が成長して子どもになった時の話です。

刻也と咲は災厄の壺の真実を捨てれば元の世界に戻れるはずだったのに、スラムのような街ににたどり着いてしまいます。

そこで二人が見かけたのはゴミを漁って生きている少年カイリでした。カイリは仲間のヒトが持つ七色の葉っぱのような形をした「コトノハ」が気に入っています。これを眺めていると母親に抱かれている赤ん坊の夢をみて幸せな気分になれるからなのです。カイリはヒトから「神殿に行けば両親の言葉を聞くことができる」と教えられ神殿に忍び込みます。そこで、カイリは災厄の壺を見つけてしまうのです。

災厄の壺のことを知り、コトノハで自分が見ていたことは真実であることをカイリは知ってしまいます。しかし、その真実を知るということは災厄をおこし、自分もその災厄に飲み込まれてしまいます。

母親は子どもが生き延びて愛に祝福されることを願い、真実を忘れるように言います。でもそのときに言った「全部わかってるから」という母の言葉で、カイリの両親の愛に飢えていた心は救われて真実を忘れることができたのではないかと思います。

咲がこの不条理を目の当たりにし心を痛めているところを刻也が強引に元の世界に連れて戻ります。、咲にとっての真実とは好きな人と一緒にいたいということのようにも思います。

 

【本音】

お互い思うことがなかなか言えない刻也と咲に、都和子はコトノハをわたします。そして咲と刻也はなぜかお互いのファッションについて口論になります。見かねた都和子は、お互いが相手の服を選んでそのセンスで勝負したらどうかと提案し、二人はショッピングモールへ一緒に出かけます。

さて、各巻最終話でお約束の咲ちゃんペロペロタイム(あまあまバカップルタイム)がはっじまるよ~。

無意識にデレてしまう自分にその気がないかのように言い訳する咲の独白は本当に可愛らしい。また、いいとこ見せようと友達から仕入れた情報で、付け焼刃の知識で咲をエスコートしようと懸命になる刻也もなかなか面白い。

咲が刻也の服を選ぶときは順当だったが、刻也が咲の服を選ぶターンでは、刻也のブレーンの入れ知恵でいつも黒づくめの咲にとってぶっ飛んだファッションばかりで、妄想力が掻き立てられますね(笑)。

「友達ときたことがあるから」などという刻也に対して独占欲がメラメラする咲の様子もいいです。

結局咲はセンスの良い服よりも、刻也が自分で考えて選んでくれることが重要だったのでしょうね。

ラストでうれしさや照れを隠す咲の仕草はなかなかお茶目でした。

 

2012年08月15日読了
★★★★★4.5
巻を重ねるごとにこのバカップルとっととどうにかなっちゃえよとか思うけど、簡単にそうならないところがいいですよね。

 

“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店 5
御堂 彰彦 (著), タケシマ サトシ (イラスト)
アスキー・メディアワークス 電撃文庫
2009年01月07日発売

「“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店 5」への2件のフィードバック

  1. >世界の悪意が詰め込まれ、蓋を開けると災厄があふれだす

    という設定はいろんな作品で見られる設定ですよね。
    やはり人間はある特定の人やモノに悪を押し付け、自分は善であろうと思いこもうとする傾向にありますよね。

    例えば悪いことをするときに「自分の心に悪魔がささやきかけた」なんてのがありますが、そうささやくのは悪魔ではなくて自分自身です。
    人間とは誰でも善も悪も持ち合わせた複雑な存在であり、ある人やモノに自分の悪を押し付けて、自分は善のみの存在になることはできないのだ、ということをこういう話を読むたびに思ってしまいますね。

    1. > 星鈴さん

      コメントありがとうございます。

      このシリーズのレビューを乗せたのは初めてなのですが、このシリーズは魔術や呪術、人の怨みや憎しみによって生まれ、不思議な力を持った“アンティーク”やそれの力にとりつかれた人と、主人公の咲や刻也たちの物語なんです。

      先日お送りしたウルトラQの面白さの一つもこの物語に通じるものがあると思います。
      人類の発展ためにとやってきたことが、ちょっとしたきっかけで逆に脅威となり、それを終息させる手段が不条理だったり、事の結末に心を痛める人がいたりするところなんですね。

      この物語でも、アンティークの力に頼りすぎてしまった人々に起こる不条理がとても苦々しいです。

      おっしゃるようにどんなことでも光があれば必ず影があり、いいことばかりの執着が強くなるほど、悪い力は本人の見えないところで強くなって思わぬところでその人へ降り掛かってくるのだと思います。

      人間にも物事にも必ず二面性があるということを軽んじてはいけないですよね、

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