レンタルマギカ 最後の魔法使いたち

レンタルマギカ 死線の魔法使いたち”に続き、いつきの妖精眼(グラムサイト)に潜んでいた“紅い種”をめぐる“協会”と“螺旋なる蛇(オピオン)”の“大魔術決闘(グラン・フェーデ)”の結末を描いたシリーズ完結編です。

双方ともに強大な魔術をぶつけ合い、魔法使いたちは次々に倒れ、戦いは苛烈を極めます。

いつきの父親であり、魔術結社アストラルの元社長“伊庭司”は強大な呪力をぶつけあう巨人が戦う中に飛び込んでいきます。

そして、螺旋なる蛇(オピオン)は世界中の人々に魔法についての認識を変えようとする惑星魔術を完成に近づけるとともに、布留部市の霊脈(レイライン)から龍(アストラル)を召喚し、新たなる人間では到達不能な魔力の領域“第三団(サード・オーダー)”に変容させようとします。

そしていつきは、螺旋なる蛇(オピオン)の願いを託されたフィン・クルーダと再度相まみえることになります。

 

前半はアストラルの元社長でいつきの父親でもある伊庭司と元社員たちの大活躍です。

ここでようやく彼がなぜグラン・フェーデに協会の傘下として参戦することになったか、そして12年にも渡る失踪は何のためだったのかなど明らかになります。これについては物語の根幹に関わるので書かないでおきます。

2体の巨人は強大な呪力をぶつけて戦いながらも融合していきます。その体の中に司は潜り込みます。巨人の体の中は空間の存在、個としての意識の存在、肉体と精神の区別など曖昧な世界で、一瞬でもありとても長い時間のようにも感じる中で、歯をむき出しに手を伸ばす司の様子はスリリングで、舞台と彼の対比がなんとも不思議な感じがしました。

司の行動でグラン・フェーデの成立条件が破綻してしまったため、フェーデ自体は無効となり、アストラルは中立ではなく、螺旋なる蛇(オピオン)の目的を阻止しようと後半に突入します。

アストラル社員のオルトヴィーンは、かつての師匠であり自分を散々な目にあわせてきたツェツィーリエを打ち破ります。ツェツィーリエが命尽きる時にオルトにささやいた言葉は、オルトの脳裏に強く焼き付けられます。オルトは憎しみの対象としてツェツィーリエと戦って来ましたが、その言葉はオルトに一緒にいた日々はそれだけではなかったのだと思い出させたのでしょうね。いつもぶっきらぼうで怒鳴り散らしてばかりいるオルトだけにこのエピソードは心に残ります。

自身の未来を引き換えに魔神と融合したアディリシアは魔力を制御して自己を保つのが精一杯です。彼女はいつきと誓いを交わすことで自己を保つことに成功します。

穂波にはいつきへの贖罪の気持ちもあるかもしれないけど、恋敵でもあるアディリシアに何の駆け引きもなく力を貸すところは彼女の気持ちの良さの一言に尽きます。

でも結局布留部市の霊脈から召喚された龍(アストラル)はどうなったのかちょっと曖昧な感じもありました。

“魔法使いの幸せ”はいつきも司も思い抱いていたことですが、父親と同じやり方ではなく自分のできることをやるんだといういつきの強い気持ちは、真摯なだけに自分の近しい魔法使いだけではなく、螺旋なる蛇(オピオン)などの敵対する連中や、過去に禁忌に手を出し身を滅ぼした魔法使いたちがやろうとしたのも、結局は彼らそれぞれの幸せのためだという解釈に結び付いたのでしょうね。

この巻では、先にあげた司の失踪にまつわる秘密、協会の副代表ダリウス・レヴィの生い立ち、魔女の中の魔女と言われたヘイゼル・アンブラーが羽猫になった秘密、魔法使いを罰する魔法使いになった影崎の秘密など、これまでずっと引っ張ってきた謎が明かされます。

不条理であったり、過度の飛躍してたりという終わり方ではなく、犠牲は出たもののそれぞれの幸せへ向かう終わり方だったのではないかと思います。

この巻が完結ですが、予定の料理は全部食べたけど、なんかもう一品欲しいよねという感じです。まだまだ読んでみたいエピソードが沢山ありますね。

例えば、アディリシアと離れてしまうことができなくなったいつきとの間に起こるドタバタコメディとか、司の現役時代のアストラルの話、まなみと影崎との出会い、そして、穂波といつきの関係はどう清算されるのかなどなど、過去の話も未来の話も興味ありますね。

 

2012年08月01日読了
★★★★★

レンタルマギカ 最後の魔法使いたち

三田 誠 (著), pako (イラスト)
角川書店 角川スニーカー文庫
2012年08月01日発売

「レンタルマギカ 最後の魔法使いたち」への3件のフィードバック

  1. 私はこんな感じの花ゆめに載っているような感じの絵柄が好きなんですよね!!
    いい感じの絵ですね!!

    1. >星鈴さん
      コメントありがとうございます。
      pako先生のイラストは、ライトノベルのイラストではかなり個性の強い部類だと思います。
      色の感じやキャラクターの細身加減は素敵ですよね。

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