二つの好きを貫く主人公たちに感動 映画“図書館戦争 革命のつばさ”

メディア良化委員会の行き過ぎた検閲から本を守る“図書隊”の物語。表現の自由は誰によって守られるのか考えさせられ、不器用ながらも二つの“好き”を貫いた二人には感動しますよね。

有川浩原作の同名シリーズの小説が原作で、マンガやTVアニメにもなっている作品で名前くらいは知っている方も多いと思います。

時代は2019年(正化31年)。公序良俗を乱す表現を取り締まる“メディア良化法”が成立して30年。

この法により出版・放送などを取り締まるメディア良化委員会の行き過ぎた検閲から、図書館の自由と良書を守るために図書隊が組織され、メディア良化委員会に対抗しています。

ある時、原発でテロ事件が発生し、その手順が作家当麻蔵人の小説と酷似していたことから、メディア量会員会は当麻の執筆活動を停止させようと彼を拘束しようとします。

表現の自由を守り、行き過ぎたメディア良化法に対抗するために、図書隊は当麻を保護し、図書特殊部隊に所属する主人公の笠原郁と彼女の上官である堂上篤は当麻の警護にあたります。

また、図書隊は当麻を原告にメディア良化法が違憲であることを法定に訴えます。

 

原作小説は書店でもよく平積みされているのを見かけるので、かなり人気があるかと思いますが、読んだことはなく、TVアニメをちらっと見た程度でした。

原作やTVアニメありきというのもある程度はありますが、この映画は最小限の舞台背景もわかるようになっていますし、スポットをあてる人物やストーリーも絞りこまれてうまくまとまっているので、初めて図書館戦争に触れる人でも分かりやすく楽しめると思います。物語によく登場するカミツレの花については劇中で説明がないので、その花言葉を知っておくと主人公の郁と上官の堂上や特別顧問の稲嶺のことがわかりやすいと思いますよ。

 

主人公の笠原郁(井上麻里奈)は高校時代に書店で検閲にあい、買おうとしていた本をメディア良化隊にとられそうになるところを、図書隊員に助けてもらった過去があります。それから名も知らない図書隊員を“王子様”として憧れ、図書隊に入りました。持ち前の身体能力と、不器用だけど一生懸命な頑張りが評価され、エリート部隊の図書特殊部隊に配属されました。上官の堂上に好意を抱いていますが、恋愛については純情すぎてなかなか想いを伝えられずにいます。

本 能のままに行動する郁と対照的なのが、寮の同室に入居している業務部の柴崎麻子(=沢城みゆき)といえるでしょう。彼女は自称「情報屋」と名乗るほど仕事 でも異性関係でもなかなかあざとい一面もあります。彼女は検閲の廃止を目的に議員などの権力者への根回しなどに暗躍する未来企画の会長手塚慧と手を組むために高級天ぷら屋で会食しますが、そこでのウイットに富んだ台詞は彼女の頭の良さを見せつけます。また、手塚の弟とのロマンスもなかなかヒネリが効いていて、郁と堂上の恋バナとは対照的な感じがします。

郁の上官の堂上篤(=前野智昭)は生真面目で正義感の強い人物です。そして彼が郁の“王子 様”なのです。実直なところが郁とも性格が似ていて相性がいいと言われています。図書隊とメディア良化委員会が武力衝突する中、銃を撃ちあうのは本当の正義なのかという問いを自分の中にも持っています。郁に好意を抱いていますが、彼女同様の不器用さなのか、彼女に対していつも怒っているかのように接していま す。

 

当麻は図書隊の特別顧問の稲嶺の自宅に滞在することになります。

郁や堂上は、図書特殊部隊で体を張った危険な仕事が多いのですが、当麻の本について語るシーンでは本が好きだというのが根っこにあるのだなというのがよく伝わってきます。

当麻は稲嶺から図書隊設立のきっかけとなる“日野の悪夢”を知 り、郁になぜ図書隊員に なったかなどを尋ね、本を守る人々がいるということをあらためて知ります。

そ して、自分は作家でありながら検閲には無関心を装い、自分の書きたいものよりも検閲をすり抜け売れるものを書けばいいと思っていたことに気づいて、郁たち の思いに応えようと変わっていきます。それが彼を自由に作品が書ける国への亡命に動かすきっかけになったのだと思います。

私たちの社会でも 表現の自由を何かしらの形で規制しようという動きがあるように思いますが、郁が図書隊員になろうと思ったきっかけ、当麻の気持ちの変化を見ていると、健全な表現の自 由を守っていくには作り手だけではなく、それを流通させる人、受取る人も当事者意識を持つことが必要なのではないかと考えさせられます。

 

表現の自由をどう守るのかという社会派ストーリーともう一つは郁と堂上のラブコメは物語の目玉です。

郁は純情すぎるし、堂上はデレないツンデレという感じで、お互いの思いがなかなか分かり合えないエピソードはTVシリーズでもあったように記憶しています。

過去に検閲の時堂上から助けられ彼に好意を抱く、紀伊國屋書店の店員の清花の登場は郁の気持ちに揺さぶりをかけ、彼女の気持ちを後押しするというところは一工夫という感じで良いと思います。

当麻を亡命させる途中で堂上は負傷し、郁に一人で当麻を守れと命じますが、そこで郁は堂上への気持ちをストレートにぶつけ約束を交わします。

郁は任務を成功させ、入院中の堂上を訪ねますが、ここの二人の不器用なやりとりは困難を乗り越えてきただけあって、感動しちゃいます。

二人とも本が好きというところと、お互いが好きという二つの好きを貫き通した結末は、清々しい気分になりました。

 

キャ ストは郁に井上麻里奈と柴崎に沢城みゆきがあてられています。この二人は自分の中ではここ数年の注目株の声優で、この映画でもいい演技をしていたと思いま す。また、当麻にイッセー尾形をキャスティングしたのは、図書隊の関係者との位置関係にメリハリが出てうまくいったと思います。

 

2012年06月17日 T・ジョイ新潟万代にて鑑賞
おすすめ度:★★★★★
このデレない二人は結婚したんけど、どんな新婚生活なんだ(笑)

監督: 浜名孝行 遠藤誠
脚本:古怒田健志
原作:有川浩
出演:井上麻里奈(笠原郁)    前野智昭(堂上篤) 沢城みゆき(柴崎麻子) 鈴木達央(手塚光) 石田彰(小牧幹久) 鈴森勘司(玄田竜助) 潘めぐみ(児島清花) 佐藤晴男(稲嶺和市) イッセー尾形(当麻蔵人)
2012年 日本作品

リンク
“図書館戦争 革命のつばさ”公式サイト
図書館戦争 革命のつばさ@ぴあ映画生活

「二つの好きを貫く主人公たちに感動 映画“図書館戦争 革命のつばさ”」への6件のフィードバック

  1. なかなか、有名な作品ですよね。

    私も気になっていました。(*^_^*)

    デレないようで、二人っきりの時はデレデレかもしれません(笑)

    1. > 瑠梨さん

       コメントありがとうございます。

       実はどんな新婚生活を送っているかは、小説にはあるらしいですが、読んでいないのでここでは書いていません。

       なかなか楽しめる映画でしたので、ぜひ劇場でご覧下さいね。 

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