自分に素直って意外と難しい 映画“幸せへのキセキ”

新たな人生をスタートさせようと動物公園の再建に取り組む家族の物語。
“自分の気持ちに素直になる”ことで、最愛の人を亡くした悲しみを思い出に変え、壊れかけた家族との関係を取り戻します。この物語に強く共感し、感動しました。

突撃コラムニストのベンジャミン・ミーは妻を亡くし、中学生の息子ディランと小学校に入ったばかりの娘のジニー2人の子どもと暮らしています。今まで仕事一辺倒だったベンジャミンは子どもたちとの関係や家事があまりうまく行っていません。

長男は度々問題を起こし退学になり、ベンジャミンは同情で雇ってもらいたくないと仕事を辞めます。

環境を変えてやり直そうと考えたベンジャミンは郊外の家を買います。そこは閉鎖中のローズムーア動物公園で、ケリーやリリー達スタッフが動物たちの世話をしていました。

動物公園に住むことを娘のジニーはとても喜びますが、息子のディランは嫌で嫌でしょうがないという感じです。ジニーは動物たちと無邪気にふれあいここでの暮らしを楽しみますが、ディランは心を閉ざしベンジャミンやスタッフたちを避け独りで絵を描いてばかりです。

ベンジャミンは動物公園の新しいオーナーとなり、動物公園の営業再開に取り組みます。

一時はうまくいっていたかのように見えますが、動物や動物公園に携わることが初めてのベンジャミンは再建のために貯えを使い果たしてしまい行き詰まります。

そして、それをきっかけにスタッフのベンジャミンへの信頼は揺らぎ、息子ディランとの亀裂が深まってしまうのでした。

 

【本気で付き合えばしがらみも重荷じゃなくなる】

妻を亡くしたベンジャミン・ミー(=マット・デイモン)のところには、次々と女性たちから同情やそれをきっかけに付き合えないかと次々にラザニアの差し入れが届きます。また、業績不振の出版社が彼を雇っているのも同情からとのことです。

兄からは「妻のことにとらわれず、自分自身が楽しめる生き方をしろ、妻を失ったことの悲しみ、彼女への愛情からか、ベンジャミンは女性との付き合いをかたくなに拒みます。

そんなところに息子のディランの退学騒動となり、環境を変えてやり直そうと決めます。

彼は自分にあざとさや同情を見せる人々とのしがらみを断ち切り、妻との思い出だけを抱いて子ども達と生きていこうと、引っ越そうと決めたのだと思います。

しかし、引っ越した先は動物公園で、動物だけではなく、そこを維持してきたケリー(=スカーレット・ヨハンソン)達スタッフがいて、結局新しい家では別のしがらみが待っていました。

初めの頃、ベンジャミンはスタッフたちと距離を置いているような感じもあり、スタッフたちも長く続かないだろうと半信半疑でした。

動物公園の再建に向けて、わからないなりにも本気になって、スタッフたちと一緒に作業に励むことで、この間までは断ち切ってしまいたい他人とのしがらみも彼にとって重荷でなくなっていくように思いました。

 

【反発する父親と息子に共感】

自分もそうですが、父親と息子はどこかギクシャクした関係になってしまいがちだと思います。しかも母親を亡くすには幼い年齢だった息子には母親の死は心に重い蓋をしているかのようです。そうしたことが彼の描く陰鬱な絵に現れているかのようです。

ベンジャミンはディラン(=コリン・フォード)のことを愛してはいますが、立派に成長して欲しいから人並みにきちんとして欲しいという気持ちが先走ってしまうことから厳しく接することから、子どもは嫌われているのではないかと思い込んでしまうようです。

どこかで分かっていても、通じ合えない二人はお互いの心の叫びをさらけ出すことがきっかけで打ち解けていきます。

「自分だって助けて欲しいのだ」とそれぞれが吐き出すシーンは心に響きますし、もっと自分の心を素直に出してもいいんじゃないかと思わせます。

その後、ディランも動物公園の仕事を手伝うようになり、ベンジャミンと一緒に作業をすることで打ち解けあっていきます。気持ちを通じさせるには一緒に何かをやってみるというのもいいのかもしれません。

 

【家族の気持ちを映し出す動物たち】

ベンジャミンやディランが抱えている心の苦しさは、彼ら自身の様子からも察することができますが、動物公園の動物たちの様子やそれに向きあう彼らの様子でより明確に伝わるように描かれていると感じます。

動物公園の再建に向けて準備をすすめる中で、ストレスを抱えていた熊が囲いから逃げ出してしまいます。その様子はまるでベンジャミンが心に重くのしかかる亡き妻への気持ち、うまくいかない息子との関係、頑張っていてもうまくいかない動物公園の再建からのストレスなど、悩みから解放されたいという気持ちを表しているかのようです。

また、病気で苦しみ死期が近づいているトラをベンジャミンは延命しようと躍起になります。ベンジャミンもディランもなかなか妻(母)の死を乗り越えられない辛さを物語っていると思います。

一方で、幼いながらも母親の死を受け止めることが上手くできている娘のジニー(=マギー・エリザベス・ジョーンズ)は、クジャクの世話を楽しみ、そのクジャクが卵を産み、雛が卵の殻を割って出てくるところに大喜びします。新たな生命が誕生し育つことは、彼女が新しい世界での暮らしや、家族の将来に希望を抱いていることを表しているかのようでした。

動物の行動が人を感動させるという映画はよくあると思うのですが、言葉を持たない動物たちが人間の気持ちを表しているかのような演出はなるほどと思わせますね。

 

【20秒の勇気が呼び起こしたキセキ】

動物公園のスタッフにはディランと同じくらいの歳の女の子リリー(=エル・ファニング)がいます。動物公園の仕事柄、同じ年頃の子ども達と付き合う機会がないのか、彼女はディランに興味を持ちます。

彼女は毎日4時15分になると、みんなから距離を置いて自分の殻にこもって死の世界の絵を描き続けるディランのところにサンドイッチを届けに来ます。少しずつ打ち解けていく間に彼女はディランに好意を持ちますが、ちょっとした言葉のすれ違いで、彼女は傷ついてしまいます。

ベンジャミンとディランの気持ちが衝突し爆発するのはその後です。ディランはベンジャミンと打ち解けあううちに“20秒の勇気”の話を聞きます。そして、自分の気持に気づきリリーにそれを打ち明けるシーンは観ていて気持ちがいいものです。

ラストは、ベンジャミンとケリーのロマンスで終わるのかなと思いましたが、そこはうまく裏切られました。

息子と打ち解け、動物公園もオープンし、ようやく心の重荷から解放されたベンジャミンはラストで自分自身の20秒の勇気を子ども達に聞かせます。そこで起こったキセキは感動の極みです。

 

【最後に】

この映画はキャスティングがとても良かったように思います。ありのままの家族を演じたマット・デイモンやスカーレット・ヨハンソン、エル・ファニング、子ども達の演技は繊細でよかったです。特にディラン役のコリン・フォードは思春期であるうえ母親の死が重くのしかかっていて自分の殻に閉じこもってしまう陰鬱な感じから、少しずつ心をひらいていく役柄をうまく演じたと思います。

また、一癖も二癖もある動物公園のスタッフたちはユニークで観ていて楽しいです。

前半ではベンジャミンは妻の写真すら見ることをためらっています。きっとそれを観てしまうと自分は悲しみに飲み込まれて立ち直れないのではないかと、強く自分を抑えつけている様子は痛々しいです。

しかし、動物公園のオープン直前になり写真を見て涙ぐみます。動物公園の再建に夢中になることを通じて、自分の気持に素直になることができたからこそ、悲しみを思い出に変え、家族に関する悩みも乗り越えることができたのではないかと思います。

受け止め方は人それぞれによって異なりますが、とても共感できるエピソードがたくさん詰まった映画でした。

 

2012年06月08日 T・ジョイ新潟万代にて鑑賞
おすすめ度:★★★★★
エル・ファニングちゃんが可愛すぎて生きるのが辛い・・・・・

We Bought a Zoo
監督     キャメロン・クロウ
脚本     アライン・ブロシュ・マッケンナ
キャメロン・クロウ
原作     ベンジャミン・ミー(We Bought a Zoo: The Amazing True Story of a Young Family, a Broken Down Zoo, and the 200 Wild Animals That Change Their Lives Forever)

音楽     ヨンシー
出演 マット・デイモン スカーレット・ヨハンソン トーマス・ヘイデン・チャーチ コリン・フォード マギー・エリザベス・ジョーンズ
2011年 アメリカ作品

リンク
“幸せへのキセキ”公式サイト
幸せへのキセキ@ぴあ映画生活
象のロケット

「自分に素直って意外と難しい 映画“幸せへのキセキ”」への19件のフィードバック

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  3. やっぱり人間関係って、ウチもそうですが家族といえども簡単なモノではないと思いますよ。
    映画なら、感動のラストがあるでしょうけど、人生には死んでしまうまで終わりはないのですからね…。

    それにしても、動物が人の心を開くことは精神科の治療でもあるそうです。
    例えば、イルカと触れ合うことは自閉症の人の治療に効果があることが実証されていますしね。
    やはり、同じ命を持つ生き物同士の交流は、人の心に奇跡を起こすのでしょうね。

    私は、試験が終わったらシャチを見に行きたいと思っているんですよ!!
    私がおごりますので、ぜひコミケの前日にでも鴨川の水族館に一緒に見に行きましょうね!!
    日本でシャチが見れる水族館は4つだけで、しかもシャチがショーをするのは鴨川だけなのですよ!!

    1. > 星鈴さん

       コメントありがとうございます。

       本当に家族の人間関係というの近しいだけに本当に難しいですね。

       おっしゃるとおり、映画の主人公もその子ども達も動物とのふれあいが心を動かすきっかけになったと思います。

       福岡へ行く旅費を優先させたいので、コミケは経済的に難しいかもしれません。

       でも星鈴さんと一緒にコミケに行ければ自分にとってはとてもよい経験になると思いますし、どんな風に星鈴さんの同人活動に関われるのかイメージしやすいのかなとも思っています。

       少し考えてみますし、また別途に相談させてくださいね。

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