11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち

結果を出せず、誰に受け入れられなくても、自分の思想を主張し、武士の精神を自ら体現し、美しく生きることを追求した三島由紀夫や若者たちの純粋さが生々しい映画でした。

1967年三島由紀夫はノーベル文学賞候補にもなり、作品の売れ行きも好調で、文学作家として絶頂期にあったと思います。

彼は作家活動を縮小し、ライフワークに取り組みたいと、若者を集め民兵組織「楯の会」を結成します。

当時日本は大学の学費値上げへの反対や学生の自治の獲得、日米安全保障条約の更新や戦争批判などで学生運動が盛んな時期でした。

この映画は三島由紀夫と若者たちの楯の会結成から、1970年(昭和45年)11月25日に自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決するまでを描いたものです。

 

非戦の憲法の改正、再び天皇を神とし、天皇の軍隊による治安維持などを掲げ、自衛隊は日本の軍隊であり有事の際には楯の会は自衛隊とともに敵なるものと戦うとしていました。

日本の文化は武士道であり、美しく死ぬことこそ生きる目的であるとしていました。そのためには精神が健全であることが必要で、さらに健全な精神は健全な肉体があってこそなのだと三島は言います。

楯の会のメンバーが自衛隊で訓練にあたるのは、軍事行動を身に付けるだけではなく、健全な肉体を作るためなのでしょう。

三島の後を追い割腹した森田は三島から最も厚い信頼を受けていました。森田は三島に「自分は先生の作品は難しすぎてわからない」と話し、三島はそんな森田に「そんなことを気にするな、それよりも大切なことがある」と笑いかけます。

同じように三島は自分の思想と相反する全学連との対話で、彼らの思想や行動には賛同しないが、彼らが若く純粋な気持ちで活動していることについては好意的でした。

三島は若者の純真無垢な心を愛していたのではないかと感じます。

新宿騒乱など混乱を極める学生運動を沈静化するために、楯の会は自衛隊の出動を期待していましたが、強大な警察の力で、自衛隊の出番がありません。

自分たちが決起するチャンスがなくイライラする若者達を三島は焦るなと抑えます。しかし最も焦っていたのは三島本人なのではないかと思います。

思いを抑えきれなくなった三島達は、自分たちの活動が結果に結びつかず、誰にも聞かれなくても、思想を主張し、自分の理想とする生き方を体現したのが自衛隊での事件になったのだろうと思います。

ラストに三島の妻は三島と一緒に決起した若者の一人に「何が残ったのか?」と問いかけます。きっとそれに答えることは誰にもできないのではないかと思います。純粋に美しさを追求するあまりに三島は何も残さなかったのではないのでしょうか。

 

2012年06月02日 新潟・市民映画館シネ・ウインドにて鑑賞(6月22日まで上映)
おすすめ度:★★★☆☆

企画・制作・監督: 若松孝二
脚本:若松孝二、掛川正幸
音楽:板橋文夫
出演:井浦新、満島真之介、寺島しのぶ ほか
2011年 日本作品

【リンク】
“11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち”公式サイト
11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち@ぴあ映画生活

「11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち」への13件のフィードバック

  1. 三島さんは、あまり知らないのですが、本はおうちにあると思います。

    なぜ、割腹自殺をしたのか経緯を知らないので、観ると勉強になるかもしれませんね。

    1. > 瑠梨さん

      コメントありがとうございます。

      こうした歴史上の人物や物事を知ることができるのも映画のいいところですね。

      三島事件に限らず、映画を通じていろいろな物事を知るのは面白いですよ。

  2. 三島由紀夫先生と東大全学連の論争の本は読みましたが、あまりに難解で、途中で読むのを止めてしまいました。
    まあ、私に限らず、あの内容を理解できる人は全体の1%もいないと思います(笑)
    ちなみに、カミュとサルトルの論争の本も意味がわかりませんでした。
    この2冊が人生で読んだ理解不能の二大作品です(笑)

    やはり大衆に支持される思想(それが良いモノかどうかは別として)とは、もっと平坦で理解しやすいモノではないかと思うんですよね。

    頭が良すぎる人は、ここが良く分からないのではないかと凡人の私は思うんですよね…。

    1. > 星鈴さん

       コメントありがとうございます。

       この映画でも東大安田講堂に立てこもった全学連の学生と三島由紀夫が対話をする場面があります。

       映画の中で三島由紀夫の言っていることはシンプルでしたが、学生の言ってる関係性云々とかいうのが極めて理解不能でした。

       本当におっしゃるとおりで、人に何かを伝えるならわかりやすさというのは大切ですよね。

       楯の会は声を大きく大勢の人に主張すると言うよりも、天皇の軍隊を動かすことで自分たちの思想を伝えたかったようにも思います。

  3. ピンバック: INTRO
  4. ピンバック: ゴリラも寄り道
  5. ピンバック: soramove
  6. ピンバック: LOVE Cinemas 調布
  7. ピンバック: 西京極 紫の館
  8. こんにちは。
    TBをわざわざありがとうございます。
    本作は、おっしゃるように、「三島由紀夫と若者たちの楯の会結成から、1970年(昭和45年)11月25日に自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決するまでを描いたもの」なことは間違いありません。
    ただ、“そっくりさん”からほど遠い井浦新を主役に起用したこと、三島のところに現れる少年が自殺した山口二矢となっていること、三島の妻が東富士演習場を闊歩することなどなどからすると、決して三島の行動をドキュメンタリー的に描いたものではなく、むしろ若松監督の世界に引き付けてずいぶんと幻想的に作り上げた作品なのではと、あまり同意を得られないかもしれませんが、ひそかに思っているところです。

    なお、連絡の手段がないのでここで誠につまらないことを申し上げまして甚だ恐縮ですが、6月14日に、クマネズミのブログ記事に4本のTBをいただいたのでそのうちの3本を消させていただいたところ、昨日、再度TBをいただきました。
    あるいはTBにかかるシステムの不調によるかと思うところ、失礼ながら、この機会に一言付け加えさせていただきました。
    いうまでもありませんが、わざわざTBをいただくことはクマネズミにとって大変ありがたいことであり、決して杉山さんからのTBの受け取りを拒否するものではありません。どうか誤解なさらないよう心からお願いいたします。

    今後ともクマネズミのブログをよろしくお願いいたします。

    1. > クマネズミさん

      ご丁寧なコメントありがとうございます。いつも独自の視点と緻密な注釈に感心させられています。

      まずは、TBの件でご迷惑をお掛けしてしまいお詫び申し上げます。
      おそらく先日当ブログのシステムをアップデートしたことの影響もあるかと思います。詳しくはこれから調査して対処させていただきます。
      ご指摘ありがとうございました。

      この映画について
      >むしろ若松監督の世界に引き付けてずいぶんと幻想的に作り上げた作品なのでは
      とおっしゃられていますが、私もそう思います。
      事実に基づいているとはいえ、そうした創作要素があってこそ映画になるのではないかと思っています。
      ただ、恥ずかしながら三島由紀夫のことやこの事件のことについては今まで関心を持ったことがなかったので、これらの事を知るいい機会になった映画でもありました。

      重ねてお礼とお詫びを申し上げますとともに、こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。

  9. ピンバック: ひろの映画日誌

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