死者の願いは残った人の心を救う ライトノベル“テルミー 2 きみをおもうきもち”

亡くなったクラスメートの願いを叶える物語は、心があたたかくなりますね。

彼女たちの行いは事故から生き残ったテルミーと清隆の心が救われていく物語だとも思えてきます。

この巻では彼女たちの理解者や友達ができるようになり、いずれ彼女たちの心を救ってくれるのではないかと思います。

 

プロローグは、大人になっておばあちゃん孝行をできなかったことを祖母に謝る亡くなったクラスメートの話でした。十分に母親や祖父母に親孝行できていない自分には痛い話でしたが、あたたかな気持ちになりました。

 

メインの1つめのお話

園芸部の部長だった西川は、入学したときから薔薇を大切に育て、それが綺麗に咲いたら同じ部の理沙に告白しようと決めていました。皮肉にも薔薇は美しく咲いたのですが、西川は事故で亡くなってしまっていたのです。

理沙の母親は交通事故で亡くなってしまったのですが、父親は家の不幸をとりのぞこうと霊能者の熱狂的な信者になってしまいました。
西川の想いを伝えようとするテルミーと清隆の前に霊能者の介入は意外な設定でなかなか面白かったです。

しかし、テルミーは24人の思いだけではなく彼らの知識や技術も背負っていて、奇術が得意な周防の力を借りて、霊能者のトリックをあばきます。

物語は西川が理沙へ思いを伝えるというだけでなく、周防が本当の神秘を体験してみたいという願いも叶えてしまいます。周防の活躍で理沙の母親が亡くなる間際の思いを知ることが出来、理沙とその家族の心は霊能者から救われます。テルミーの中にいる複数の人物が物語に絡んでくるという展開は前巻にはない新鮮な展開となりました。

西川と理沙の結末は読み手の想像にお任せしますといったところでえすが、皆まで言わない美しい文章がロマンチックです。

 

メインの2つめのお話

映研部の部長山崎は、やる気をなくして辞めていった先輩たちから、部長を押し付けられる形になりました。部室に一人残され活気を失った山崎のところに、女優をめざす朱莉とその従兄弟で脚本家をめざす信弥がやってきて、山崎は活気を取り戻し映画を作り始めます。

しかし、途中で朱莉と信弥は事故で亡くなり、山崎は自分だけが生き残ったことに苦しみ、映画作りの情熱を失ってしまうのです。

このエピソードでは、テルミーに願いを託す亡くなったクラスメートよりも、才能のある仲間の代わりに自分が死ねばよかったと攻め続ける山崎がメインになっています。

一時期は崩壊しそうだった映画部を3人で立て直し、作品を作り、濃密な時間を共有してきただけに、山崎の気持ちは共感してしまいます。

朱莉と信弥の心残りは“映研部と山崎”が再び活気づいて映画を作って欲しいということですが、もうひとつは自分たちと共有してきた時間を忘れてほしくないということだったとも言えます。

また、後輩の女の子広田が嗜虐的な言動で山崎を動かそうとしますが、その裏には山崎への恋心があり、  朱莉となったテルミーに自分の気持を打ち明けるところは可愛らしいですね。でも最後まで山崎にデレないところが彼女らしいです。

でも最後は山崎が立ち直ってくれたのは読んでいて嬉しくなりました。

 

この2つの物語を通じて、テルミーと清隆には理沙や彼女の友達の美奈子という理解者が出てきたり、清隆に思いを寄せる楓の登場など、彼女たちの人間関係も豊かになってきたと思います。自分たちのことを理解し気にしてくれる人が出てくることで、彼女たちの心も救われていくのではないかと感じます。

しかし、輝美はいつまで自分を保っていけるのかわからないと言います。彼女は自分自身の人格をどう守っていけるのか気になるところです。

清隆への思いを一方的にふくらませる楓の甘い気持ちと振られっぷりも好感が持てました。

 

2012年05月21日読了
★★★★★

テルミー 2 きみをおもうきもち
滝川 廉治 (著), 七草 (イラスト)
集英社 スーパーダッシュ文庫
2011年07月22日発売

 

「死者の願いは残った人の心を救う ライトノベル“テルミー 2 きみをおもうきもち”」への2件のフィードバック

  1. 一人だけ生き残って24人の思いを受け入れるというのは簡単なようで難しいことですよね…。
    それをこなしていくテルミーの優しさがあふれた作品なのでしょうね。

    こうやって人それぞれの人生の一部を歩めば、それぞれ一生懸命自分の人生を生きているということを知るでしょうし、テルミー自身の人生観も大きく変わることでしょうね。
    これからの展開がとても気になる作品ですよね!!

    1. > 星鈴さん

      コメントありがとうございます。

      少しネタバレですが、テルミーは家族を含めて人との関わりを絶って、独りになりたいということで、実家を離れて一人暮らしをしているのです。

      そんな彼女が24人もの人生を背負い込むのですから、本当に重いと思います。

      そんなテルミーがクラスメイトの人生と向き合うことで自分も変わっていく様子はこの先楽しみな作品です。

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