「静」がより感情を強く訴えかけてきます 映画“ドライヴ”

銃撃や逃走が次々に起こるアクション重視のサスペンスとは対照的に、見た目の派手さを抑えに抑えた「静的」な演出と演技が、不実な恋のせつなさや、感情に突き動かされた過激な闘いを強く刻みつけます。

名前のない主人公(ポスターに大きく写っている男)は自動車修理工場で働きながら、カーアクションのスタントマンをやっていますが、裏では犯罪者の逃走を手助けする“逃がし屋”をやっています。彼は5~6年前に自動車修理工場に働かせて欲しいとやってきたそうですが、それ以外の過去や人となりは謎です。

ある日彼は同じアパートに住む女性のことが気になります。彼女はアイリーンといい夫が服役中のため子どもと二人で暮らしています。

スーパーの駐車場で彼女の車を直したことがきっかけで二人の距離は急に近くなります。

やがてアイリーンの夫が釈放となりましたが、服役中に用心棒代として多額の借金をしてしまいます。夫は過激な取り立てで家族の命も危ないと感じ、その返済のため強盗を無理強いされ、主人公に逃走を手伝って欲しいと頼み、主人公は応じます。

しかし、その強盗は街のマフィアによって仕組まれたものだったのです。

 

彼は逃走時に警察に追われても表情ひとつ変えず冷静にルートを割り出し仕事をやりとげますし、終盤では復讐やアイリーンたちを守るためにここまでやるのかというほどの暴力を相手にふるいますが、それでも怒りや憎しみをあらわにすることはありません。

また主人公はアイリーンに恋心を抱きますが、そこでも言動は抑えめで、親切な隣人という感じで接しています。彼の控えめな言動や表情が、好きになってはいけない女性への思いをロマンチックかつストイックに描いています。

アイリーンの夫の死を転機に、でもそんな気持ちは事件を仕組んだ連中への憎しみや復讐という形に変わり、冷酷かつ過激なヴァイオレンスへとつながっていきます。

アイリーンも主人公に思いを抱いているとは思いますが、夫のことが彼への思いあらわに出来ないせつなさを抱えているように思います。そんなせつない二人の思いを、80年代っぽいメロウな雰囲気の音楽がうまく盛り上げています。

全体の雰囲気は抑えに抑えたロマンスやヴァイオレンスだけではなく、舞台となるロサンゼルスの街もきらびやかというよりはどこか退廃的に描かれていて、宣伝にあるようなクライム・サスペンスというよりも春先に観たロンドン・ブルバードと似たようフィルム・ノワールという言葉のほうがあっているように思います。

主人公役のライアン・ゴズリングはクールでありながらも、感情をしっかりと伝える演技は見事でした。

また、アイリーン役のキャリー・マリガンもスレンダーで控えめな雰囲気は魅力的です。

そして、主人公を取り巻く自動車修理工場のオーナーや、マフィアのボスなどは、個性の強い演技派揃いで見応えがあります。

映像もロサンゼルスの街を主人公がドライヴしていく様子や、抑えに抑えた表現でロマンスやヴァイオレンスを美しくかつ退廃的に描いたレフン監督の手腕も見事でした。

 

2012年05月21日 ユナイテッド・シネマ新潟にて鑑賞
おすすめ度:★★★★★4.5

原題:Drive
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本:ホセイン・アミニ
製作:マーク・プラット
製作総指揮:デヴィット・ランカスター、他
出演者 :ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、ブライアン・クランストン、アルバート・ブルックス、オスカー・アイザック、ロン・パールマン、
音楽:クリフ・マルティネス
2011年 アメリカ作品
R15+指定

 

リンク

“ドライヴ”公式サイト
ドライヴ@ぴあ映画生活
象のロケット

 

 

 

 

「「静」がより感情を強く訴えかけてきます 映画“ドライヴ”」への10件のフィードバック

  1. 全編シンセサイザーをメインにしたメロウな雰囲気の音楽もかっこよかったです。

    皆さんの感想やこの記事のご意見などお聞かせいただけるとうれしいです。

  2. 平凡な自動車修理工がマフィアの仕事と平然とこなすギャップにも驚きますが、その主人公が愛する人の夫の死で豹変する意外性がこの映画の魅力なのでしょうね。
    しかも、その愛する人と素直になれない関係が、繊細な形で描かれているような感じなのでしょうね。

    クールでありながらも、感情をしっかりと伝える演技って本当に難しいと思いますし、俳優の技量が試されるような演技ですよね!!

    1. > 星鈴さん

       コメントありがとうございます。

       本当におっしゃるとおりですよ。

       アイリーンの夫が殺されてから、劇的に主人公が変わっていく様子は、描写は過激なところもありますが惹かれてしまいますね。

       ハードボイルドっていうと、感情をあらわにしないキャラクターを連想しちゃいますけど、この映画はそれとは一味違っていて、静かなトーンでありながら、感情がしっかり描かれているところは、演技と演出の上手いところです。

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