“朧月夜” ヒカルが地球にいたころ……(4)

“ダメ……蜘蛛が月を隠したら―――あの女が、現れる―――”

ヒロインの月夜子の言葉から物語は大きく突き動かされていきます。

ヒカルが付き合っていた女の子との約束を果たして欲しいと頼まれている是光は、ある日ヒカルの婚約者であった葵から突然「彼氏になってください」と告白されます。これは葵が持ちかけられた縁談を反故にしたいためのカモフラージュということです。

同じ頃、背が高く紅く長い髪で日舞の得意な月夜子は是光に「わたしがヒカルの大事な花を散らさないように、見張っていてくれる?」と頼み、是光は日舞研究会に仮入部します。

月夜子はヒカルの兄の婚約者であり、またヒカルと付き合っていた女の子です。

葵は縁談を持ちかけた親類に擬似彼氏を紹介しようと一族の園遊会に是光を招きます。

一方、先日是光に告白はしたもののなかなか進展しない帆夏は是光と葵のことが気になり、給仕のアルバイトとして園遊会に潜り込みます。

会場で是光は月夜子を見つけて声をかけますが、いつもと様子の違う月夜子は、是光に葵のところへ行かないように訴えます。

そして、是光を探していた葵と帆夏はショッキングなシーンを目撃してしまいます。

 

今回は今までのシリーズで一番スリリングでドキドキなお話でしたし、今後の物語の展開の上で衝撃的な事実が発覚したりもします。さすが野村美月先生は読ませますね。

感想を書くと書いただけネタバレしそうでなかなか筆が進まないです(笑)

ヒロインの月夜子は、大人びて妖艶な雰囲気を持つ美しい女の子です。ヒカルは月夜子に「月夜子が踊るときは、必ず客席にいて、誰よりも月夜子を讃える」と約束しています。

前半は是光に接近する月夜子、2人に嫉妬しながらも月夜子に憧れる帆夏の様子を描いた楽しい展開です。

しかし、月夜子の様子がおかしい時は、彼女の近くに咲いていた花がちぎりとられているという、何かダークなシチュエーションも描かれています。

そして、園遊会の場面から物語はダイナミックに動いていきます。

月夜子が好意を向けていると思われる相手は二転三転し、彼女が囚われている“蜘蛛”の正体とそれにまつわる彼女の過去が明らかになっていく展開は本当にドキドキものでした。

蜘蛛の正体は意外な人物だったのですが、その偏執ぶりはまさに“気持ち悪い”としか言いようがなく、それに縛られる月夜子が可哀想でした。

蜘蛛のせいで、舞もうまく踊れなくなった月夜子ですが、いつものように是光のストレートな頑張りで救われ、無事に舞えるようになり、エピローグでは大らかであっけらかんとした雰囲気になれてホッとします。

なにはともあれ、桜の花びらが舞い散る舞台で踊る月夜子がヒカルとお別れするシーンはとても幸せで美しい場面でした。

しかし、問題は是光ですよ。赤毛と鋭い顔つきで周りからはヤンキーキングと噂されているし、女の子と面と向かって話せない性格はあいかわらずですが、ますますいい男っぷりを発揮して、何気にモテモテになっているじゃないですか。しかも何気に花の名前とか覚えちゃってるし。まったく無自覚なハーレム王とはコイツのことですよ。

葵や月夜子が是光に彼氏になってほしいと言ったのは表向きには理由をつけていますが、それだけじゃないですよね。

そして、物語のこの先を考えると、葵に常に寄り添う朝衣、ここぞというタイミングで是光の前に現れるひいな、二人の本心が気になるところです。

終盤で明かされた事実、いつも冒頭と終りのドキっとさせられる独白この人のものなのかな?などビックリすることも結構ありました。

(独白について、一部の方の間では朝衣のものではないかと言われていますが、自分としては誰のものかが明らかになる時に、ヒカルのいろいろな秘密が解き明かされるのかなと思っているので、今は誰のものと決めるのがもったいないです)

しかし是光の前に次々と魅力的なヒカルの想い人が現れるせいか、素直になれない帆夏が不憫ですね。

あと、前巻の“若紫”で是光の家に引き取られて、紫織子もすっかり是光や是光の家族になじんでいますが、結構計算高いところもあって、これから先の夏休みに何かやらかしそうです。

野村・竹岡コンビの本の竹岡美穂先生のイラストは、淡い寒色系の色合いのものが多いような感じもしますが、この本ではいつもと違う紅を基調としています。カラー口絵にある月夜子が舞っているイラストは本当に美しくうっとりモノです。それとおまけにある帆夏の給仕のユニフォーム姿もなかなか気に入っています。

 

2012年05月15日読了
★★★★★

“朧月夜” ヒカルが地球にいたころ……(4)
野村 美月 (著), 竹岡 美穂 (イラスト)
エンターブレイン  ファミ通文庫
2012年04月28日発売

「“朧月夜” ヒカルが地球にいたころ……(4)」への2件のフィードバック

  1. ヤンキーで照れ屋でカッコいいっていいキャラですよね!!
    私はちなみに暴走族に憧れていて、生まれ変わったら暴走族になりたいです!!
    私には到底できそうにもありませんから、なおさら憧れますよ(笑)

    1. >星鈴さん

      コメントありがとうございます。

      是光のヤンキーって髪や顔つきだけで周りからそう噂されているだけなんです。
      是光がヒロインと二人だけでいるところを誰かに見られただけで、翌日には“◯◯がヤンキーキングに手篭めにされた”とか噂が広まってしまうのですよ。

      本人の性格は、異性に対してどう接していいのかわからずぶっきらぼうなところもありますが、すごく正義感が強く、思いやりがあって真っ直ぐな性格でなかなかいい男です。

      暴走族ですか。ある意味であれくらい吹っ切れられればとそれはそれでいいかもしれませんね(笑)

      野村美月先生の物語は自分の中では最も面白いライトノベルのひとつですので、機会があったら是非読んでみてくださいね。

コメントを残す