ペーパーロード

“冴えない芸人たちの息苦しさに共感です”

30歳を過ぎ、東京の小さなライブハウスでステージに立つ若手お笑い芸人2組のコンビ。

好きで始めたお笑いとはいえ、何をやっても売れない、どうやって売り込んでいいのか分からないことなどへの焦燥感や閉塞感、自信喪失が鬱積していき、2つのコンビはそれぞれに解散を考え始めます。

そんな中、一人の芸人の父親から、実家のある新潟での営業の仕事を紹介され、4人はこの営業を区切りに、コンビの解散やお笑いから身を引くことをなんとなく考えながら新潟を訪れます。

この映画はそんな冴えない芸人たちの行き詰まり感を描いたロードムービーだと言えるでしょう。

 

この映画は東京と新潟市、燕市で撮影が行われました。新潟での撮影は今年3月下旬で、その1ヶ月後に完成ですから、いくら70分弱の映画とはいえ制作スピードには驚きです。松本卓也監督はにいがた国際映画祭などでも作品がよく上映されていたり、監督自身粟島の島開きイベントをプロデュースしたり何かと新潟と縁があるようです。にいがた国際映画祭は毎年仕事で長い出張に出ているので、行ける機会がなかったので、松本監督の映画を観るのは今回が初めてでした。

今回は映画館で一定期間の公開ではなく、単発のイベント形式での上映会でした。松本監督をはじめ、出演者の方々の舞台挨拶もなかなかに楽しかったです。

新潟でのシーンでは叫ぶ詩人の月乃光司さん、お笑い集団NAMARAの江口歩さん、噺家の三流亭楽々さん、ご当地アイドルのRYUTist、Angel Generation、サムライローズin北陸など、今が旬の新潟の顔が登場し、自分がよく知っている場所も登場するので、親近感がありました。

新潟の営業のコーディネーター(NAMARAの江口歩さん)が、“東京から来たんでしょ、テキトーに盛り上げて”とムチャぶりするところや、新潟のご当地アイドルから“やる気が無いなら邪魔だから来ないでください”と怒られるところなんかは、彼らが精彩を欠いていたり、売れなくて立場の弱い様子がよく出ていますね。

予告にもありますが、月乃光司さんは“死んだ人は美しい”と叫びます。彼ら4人とは関係がないように思いますが、なぜ死んだ人は美しいのかという詩の内容は今の彼らの様子とは正反対の生き方を表しているように感じます。やりたいことを自分の思うまま精一杯やって生を全うするというのは生き方としても死に方としても美しいのではないかと訴えてきます。

タイトルとなっているペーパーロードですが、その意味はステージの清掃員が語ったように、“短いように思っても、意外と長い、そしてときには紙のようにふわふわしてしまう”という人生観を込めたタイトルなのかなと思います。

芸人の一人はもうこれ以上は続けられないと、自殺を試みその様子を相方にビデオに撮らせます。その時に言い合った“死んでどうなるんだ?”“生きてどうなるんだ?”という言葉は、自己の中で生きていくのも辛いし疲れた、でも死ぬのも怖いし、死んだから辛さから解放されるのか?というような、自分でもときどき感じるような気持ちをうまく表したやりとりでした。

最初は好きではじめたこととはいえ、なかなか成功せず、自分はこんなことを続けていいのか?どうやったらこんな状況から抜け出せるのか?と自分に問い続けても、どうやったらそこから抜け出せるのか答えが出ないまま悶々とした日々が続く閉塞感は、お笑い芸人でなくても自分を含め多くの人が共感できると思います。(少なくとも自分は大いに共感してしまいました)

この映画は特別出演の西野翔さんのニコニコ動画でも注目の“踊ってみた”という感じの動画で始まり、この映像は劇中でも度々使われます。

一見映画本編とは無関係に思いましたが、芸人の妹の役だったのはちょっと意外でした。そんな彼女も終盤ではストーリーに大きなインパクトを与えます。

可愛いのでその動画も掲載しちゃいます。バックのふすまの黄ばみが何とも言えない生活感があっていいですね。

 2012年05月06日 クロスパルにいがたでの上映会にて鑑賞
息苦しさの共感度:★★★★☆

 

脚本・監督:松本卓也
出演:島隆一 山田智大 巴山祐樹 佐藤大地 バクザン 川島田ユミヲ みのみのり 野村真由美 ジャンボ仲根 荒木秀行 照井健仁 3LDK 河村唯 奥平美夏 岡本まなこ
三流亭楽々 PPP(サムライローズ) 江口歩(NAMARA) 月乃光司(こわれ者の祭典) RYUTist Angel Generation アラフォーアイドル サムライローズ in北陸 西野翔(特別出演)
協力:ナマラエンターテイメント にいがた国際映画祭
製作:シネマ健康会 制作会社ビンタ

「ペーパーロード」への4件のフィードバック

  1. 芸人さんって、長く第一線で働いている人は少ないのに、よくなろうとするなぁ…と思います。
    難しい世界ですよね。

    動画、ニーソにやられました。
    ス、スカートか、ショーパンか…ドキドキしちゃったじゃないかっ。(笑)

    1. >瑠梨さん
      コメントありがとうございます。
      テレビでも若手芸人コンビとか言ってもコンビ結成10年とか珍しくないですよね。それだけ下積みは長く、ブレイクしてもあっという間に消えていく、長く続けていくのが大変な世界ですよね。

      映画のオープニングでは、この動画が使われて、そこにニコニコ動画のコメントみたいに、スタッフや出演者のクレジットが横切っていくというなかなか面白い使われ方をしています。

  2. 子供の頃に色んな夢があったとしても、現実はほとんどの人が夢の入口に行く前に夢をあきらめてしまいます。
    そして、夢に向かってチャレンジしても、そのほとんどは夢が叶わず挫折するという現実があります。
    そんな中で、夢がかなえられない人々にスポットを当てた作品なのですね。

    私の好きなマンガ家が、あとがきで「夢がかなわないのは途中であきらめるから。最後まであきらめなければ夢はきっとかなう」と書いてました。
    高校生の頃にこれを読んで感動しましたけど、この年になって、自分も夢で挫折した身としては、これは成功したからこそいえることなんですよね。

    出版社の就職説明会でいわれていたことらしいですが、マンガ家でデビューできるのは年間150人だけらしいです。
    マンガ家を目指している人なんて軽く数えても数万人はいるでしょうけど、150人だけしかデビューできないのですね。
    そして、150人のうち一生マンガで食べて行けるのは2人くらいだそうです。
    それが現実なのだと思います。

    私の友人もマンガ家になってコミックスも出ましたけど引退しましたし、私のいとこもマンガ家にはなったけど、理想と現実のギャップに苦しんでいるそうです。

    そうやって考えると、一生夢を追いかけて行ける人は幸せなのだと思いますよね。

    1. > 星鈴さん

      コメントありがとうございます。

      自分の好きなことを生業にできている人というのはすごく僅かですし、おっしゃるようにそれが続いている人は幸せだと思います。

      好きなことを食うための仕事にするのかどうかも、それで食べていけるのかを考えると難しい選択です。

      そんな選択をしなければいけないのは、まだ世の中のことをよく知らない若い段階であることが多いですし、これ以上は無理という段階になってやり直すのが難しい歳になってしまうことも多いのでしょうね。

      ちょうどこの映画の主人公たちはそんな岐路に直面しているのだと思います。

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