桜ノ雨(さくらのあめ)

初音ミクの卒業ソング“桜ノ雨”をモチーフに、ボーカロイドたちが高校生という設定で、合唱部を舞台にした、ほんのりと甘酸っぱい学園モノです。

高校に入学したばかりの鈴と蓮は遅刻し生徒指導を受けたことをきっかけに、鈴と蓮は合唱部に入部することになります。

部の先輩には将来音楽家をめざしている部長のハルを筆頭に、ちょっと天然だけど明るく誰にでも好かれる未来(みく)、ちょっと大人びた感じの瑠華(るか)などがいます。

自分たちが本当に楽しめる音楽を奏でるために、体育会系バリの厳しい基礎トレーニングに耐え、時には悩み、ぶつかり合いながらの一年を描いたストーリーで、春夏秋冬と季節ごとに一人のキャラクターが主人公になって物語は描かれています。

自分はこの“桜ノ雨”という曲はこの本を見かけるまで知りませんでした。卒業ソングと言われているとおり、実際に卒業式などで歌われているらしいですね。

ボーカロイドはそもそもパソコンに歌わせようというソフトですが、そのイメージキャラクターも魅力的です。沢山の人達がボーカロイドを使った曲やイメージキャラクターのイラストをネット上に公開していますね。

ボーカロイドの曲にはあまり触れたことがなかったですが、彼女たちが主人公の物語ってどんな感じなのかなと興味がわきました。

自分も高校時代にはブラスバンドが部活で、練習に明け暮れたりコンクールに出たりしていたので、自分と重なる部分が多く読んでいて高校時代が蘇ってくるような気分になりました。

それぞれのキャラの性格もあちこちで見かけるイラストからからのイメージのままという感じで違和感なく楽しめました。

鈴と蓮、未来とハル、それぞれに恋なのかどうかわからないまま、相手への気持ちがだんだん強くなっていく感情を抱いていきます。結末は曖昧としている感じもするけど、その曖昧さがその年頃ならではの甘酸っぱさがありますよね。

物語的には卒業を目の前に高校生活を振り返りつつ自分の内面と向き合う瑠華の話が一番好みでした。

本の装丁もなかなか雰囲気を出していて、茶色のインクの文字はどことなくあたたかみがあって良いなと思います。

物語は部活の様子と部長のハルが作った合唱曲“桜ノ雨”を大切に思う未来の気持ちがとてもいいなと思います。

最後に音楽の知識や作曲のことを知らなかった未来があっというまにハルへ送るための合唱曲を書いてしまうのですが、ここはボーカロイドというツールが多くの人に音楽やイラストを発信する文化の裾野を広げたことを象徴しているのでしょうね。

高校の頃に親しんだ音楽は今でも耳にすると、その当時のことを色々思い出します。この“桜ノ雨”を歌って旅立っていった若者たちも、いつかまたこの曲を耳にしてその頃のことを思い出すのでしょうね。

2012年04月13日読了
★★★★☆3.5

桜ノ雨
halyosy (原作・原案), 藤田 遼 (著), 優、吉田ドンドリアン、かる、ばたこ (イラスト)
PHP研究所
2012年02月21日発売

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