メランコリア

“甘美で憂鬱であっけない世界の終わり”

惑星“メランコリア”が地球に接近する状況のもとで二人の姉妹の様子を二部構成で描いています。

第一部:ジャスティン(JUSTIN)

新婦のジャスティン(=キルスティン・ダンスト)と新郎のマイケル(=アレクサンダー・スカースガード)はリムジンで結婚パーティーの会場へ向かっています。しかし細く曲がりくねった道で大きなリムジンは立ち往生し、彼女たちは2時間も遅れてようやく会場に着きます。

このパーティー会場はジャスティンの姉クレア(=シャルロット・ゲンズブール)と彼女の夫ジョン(=キーファー・サザーランド)の邸宅です。

一見二人は幸せの絶頂にあり、パーティー会場にいる人々も心から祝福しているように見えます。

しかし、ジャスティンの母親の悪意に満ちたスピーチで雰囲気が悪くなったり、ジャスティンはパーティーを途中で抜け出し奇行に走りパーティーが何度も中断するなどで、人間関係がギスギスしはじめ、とうとうジャスティンは仕事も夫も失ってしまいます。

パーティーの翌朝ジャスティンは馬に乗り、橋のたもとで空を見上げ、パーティーの前に見たさそり座の赤い星アンタレスが見えなくなっていることに気づきます。

第二部:クレア(CLAIR)

ジャスティンの結婚パーティーからしばらくたって、クレアは自分から動くことができないほどに心が病んでしまったジャスティンの面倒を見ます。クレアの夫ジョンは毎日息子とともに望遠鏡を携え、メランコリアが最接近する日を楽しみにしているかのようにしています。しかし、クレアは夫の大丈夫という言葉が信じられずネットでメランコリアが地球に衝突することを知ってしまいます。

そして4人はメランコリアの最接近のときを迎えるのです。

メランコリアはこの映画では地球に接近する惑星の名前ですが、メランコリア(melancolia、melancholy)は憂鬱という意味の言葉でもあります。

オープニングはワーグナーの“トリスタンとイゾルデ”の楽曲をバックに絵画的なスローモーションや静止画像を使いたっぷり美しく世界の結末を描いています。これだけで雰囲気に酔いそうです。

地球の危機とかいうと何か力技を使ったり、そのために自分の命を投げ出す英雄的な存在がいて、その危機を回避することが多いのですが、本当に消滅してしまうってある意味ショッキングですよね。

ジャスティンとクレアの姉妹は対照的に描かれています。

姉のクレアは生真面目で家族の面倒見が良いという、いわゆる模範的な妻といえるでしょう。しかし、彼女はメランコリアの衝突に恐怖しパニックに陥っていきます。そして少しでも生きながらえようにと、また最後の瞬間は思い残すことがないようにともがいているようです。彼女を憂鬱にさせていくのが夫のジョンで、彼衝突することを知っていながら、家族を不安にさせないように、メランコリアは地球の傍を通り過ぎていくだけだと明るく振舞います。ジョンが明るく振る舞うほどにクレアの不安は大きくなっていきます。おそらくあと何日で世界が終わってしまうとなれば彼女のようになる人は多いのではないかと思います。少なくとも自分はそうだと思います。

ジャスティンは精神を病んでいるせいなのか、気分のまま行動し、時には結婚パーティーの時のように不可解であり自棄的な行動に走ることもあります。姉がパニックに陥っていくのに対して、彼女はメランコリア地球に近づくほど、生き生きとしていくように見えます。しかし“すべての生命は地球には不要なものだ”と言ってみたり、夜の川辺でフルヌードで仰向けになりメランコリアを眺めたりと、自分の感覚では普通ではない言動が続きます。

メランコリアの接近とジャスティンの精神状態の破綻は直接因果関係があるわけではないのですが、地球の終末とジャスティンの精神的な崩壊を重ねあわせているのかもしれません。

地球の危機ともなるとVFXを駆使したディザスターシーンが大スケールで描かれることも多いですが、この映画ではそのようなこともなく、地球の終末を迎える二人の姉妹の様子を淡々と描き、突然で何事もなかったかのように世界が終わってしまうというところはショッキングでもあり、この映画の美学でもあるように感じます。

★★★★☆
とても気に入った映画ですが、誰にでもおすすめできるかというとちょっと微妙です。

2012年02月26日 T・ジョイ新潟万代にて鑑賞

原題:Melancholia
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:キルスティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、キーファー・サザーランド
2011年 デンマーク、スウェーデン、フランス、ドイツ、イタリア作品

リンク
“メランコリア”公式サイト
メランコリア@ぴあ映画生活
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