ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

“たくさんの人との出会いを通じて父の死を受け入れ成長する少年と、さりげなく寄り添う母親の愛情に感動です”

大好きだった父親を9.11同時多発テロで失った少年オスカー。父親の死から一年以上経って彼の死をなかなか受け入れられず、父の生きていた痕跡をよりどころにしています。

父のクローゼットで古いカメラを見つけてそれを取り出そうとしたところ、同じクローゼットに片付けてあった花瓶を割ってしまいます。その花瓶の中からBlackと書かれた封筒に入った鍵をみつけます。

オスカーはその鍵で開けられるものの中に、自分と父親の死を結びつける何かが残されていて、それは封筒に書かれたBlackという人が何を開けるものか知っていると信じ472人のBlackさんを訪ねようとニューヨークの街を駆け回ります。

予告などの告知を見ていないので何の予備知識もなく、タイトルだけで観に行ってしまいました。(映画を観る前は劇場で上映される予告編を見る程度で前もっていろいろ調べたりとかはしないことが多いです)

タイトルを見たときに最近のコメディー系のライトノベルによくあるようなタイトルだなと思ったことから、笑える感じのコメディーだと勝手に思っていたら、いい意味で全く正反対でした。

しかもオスカーが言う“最悪の日”が題材になっているとはこれはまた重たいです。

オスカーが父親の死と自分とのつながりを追い求めていた理由には、大好きな父親の死をまだ受け入れることができずにいるだけでなく、最悪の日に自分が誰にも話したことのない秘密があるからだと思います。

オスカーは父親とよくニューヨークにはかつて6つ目の区があったとして、それを探すゲームをしてよく遊んでいました。そのゲームの際に父がオスカーに渡した新聞の切り抜きがオスカーを行動に駆り立てる原動力となり、ゲームで体験したことは鍵のことを知るブラックさんを探す手順に生かされているように思います。

父親自身すら予期しなかった死ですが、結果として父親がオスカーに残したものはあたかもたくさんの人々に会うことで自分を解き放って成長して欲しいというメッセージだったのかもしれません。

また、搜索の途中から祖母の部屋に同居している声の出せない老人がオスカーに同行することになります。オスカーは老人のアドバイスに聞く耳を持たず自分の考えを押し通そうとします。“自分の話は自分のものだ”“人に話したくない物語は誰にでもある”と語ります。これは老人自身も人に触れられたくない傷があることを語るとともに、興味本位で他人の内面まで踏み込んではいけないとおオスカーに言い聞かせているようにも感じます。また、この言葉はラストへの伏線にもなっているかのように思いました。

オスカーが執拗に鍵の秘密を知るブラックさんを追い求めた結末はずばり失望です。それがきっかけでオスカーはこれまで貯めていた感情を一気に爆発させます。しかし、父親の死について母と衝突していたオスカーは素直に自分の気持ちを打ち明けて母親と打ち解けられるようになります。

母親はいつも夫を失った悲しみに疲れた表情をしていて、父の死に対する意見の相違から母親を避けるようにするオスカーと衝突もしてしまいます。しかし、終盤では生き生きとしてオスカーに対する慈愛に満ちた雰囲気へと変わっていきます。彼女に何が起きたのかは映画の最大のネタバレになるのでナイショです。

ネットでの評判を見ると、オスカー役のトーマス・ホーンの天才子役っぷりや父親役のトム・ハンクス、母親役のサンドラ・ブロックが話題のようで、確かにこの3人の演技は納得の出来栄えです。

しかし脇役の演技も目を見張るものがあり、彼らの演技はトーマス・ホーンの演技と融合しオスカーの心情に何か働きかけています。

オスカーの避難場所ともいえる祖母役のゾーイ・キャルドウェル、トーマスが鍵の秘密を追い求める途中で同行することになる祖母の部屋の同居人役のマックス・フォン・シドー、最後に鍵の真実を明らかにすることになるウィリアム・ブラック役のジェフリー・ライト、彼の妻アビー役のビオラ・ディヴィスが主たる脇役になります。

特にマックス・フォンシドーとジェフリー・ライトの存在感は際立っていると思います。

父親の死を納得するために、たくさんの人との出会いを通じて少年が成長していく姿と、衝突してもいつも少年に寄り添うかのような母親の愛情のしたたかさに感動しました。

おすすめ度:★★★★★

オスカーと母親の心理描写と脇役の名演にも注目です。

2012年02月19日 イオンシネマ金沢フォーラス店にて鑑賞

原題:Extremely Loud and Incredibly Close
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:エリック・ロス
原作:ジョナサン・サフラン・フォア
音楽:アレクサンドル・デスプラ

【リンク】

“ものすごくうるさくて、ありえないほど近い”公式サイト
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い@ぴあ映画生活
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