ブリューゲルの動く絵

“その発想は無かったっていう映像表現にびっくりです”

この映画は16世紀のブラバント公国 (現在のベルギー)の画家ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude, 1525/30年 – 1569年)の作品“十字架を担うキリスト”を題材に、この絵に描き込まれた人々の暮らしぶり、同じく描き込まれたブリューゲル自身がこの絵を描くに至ったプロセスやその絵画に秘められた秘密を映像化したものです。

この映画を理解する前に、歴史が全然わからないので、この絵画の舞台となった16世紀のフランドル(今のベルギー北部)の状況を触りだけ調べたので記しておきます。当時の、旧教カトリックのスペインは、新教徒プロテスタントを異端者として信者の多いフランドルに弾圧を加えていたということです。

この絵画は銀行家で絵画コレクターのヨンゲリングが、ブリューゲルに“このあり様を表現できるか”と問われ描いたもののようです。

“十字架を担うキリスト”ブリューゲルの動く絵公式サイトより

映画は農民の牧歌的な暮らしの傍らで、スペインの傭兵がプロテスタントを異端者として次々に処刑していく様子が描かれています。

そして、その様子を屈辱的と怒りを抱きながら見届けるヨンゲリング、絵に様々なアイデアや人々の様子を盛り込もうと構想を練りスケッチを描き溜めるブリューゲルも描かれています。

絵画や美術史のことはよくわからないのですが、絵の中からの視点でその絵に盛り込まれた物語を表現していくという手法は自分にとっては初めての体験です。

この映画はストーリーがあるようなないような感じですし、セリフも驚くほど少ないです。絵画に登場する人々の様子が散文的に綴られているので、いわゆる起承転結がはっきりしているようなストーリーを期待している方は期待ハズレになるかもしれないです。

しかしながらとにかく映像表現が面白いです。描かれる人々の生活の様子は衣装やセット、メイクがリアルに感じられるように凝りに凝ったという印象を受けます。

そして近景は現実世界に存在する自然の風景を用いて、遠景はマイェフスキ監督自身がキャンバスに描いた絵画で構成されていて、映像の奥行きは不思議な感じがします。また、実写の風景についても何箇所かで撮影した映像を合成して、監督のイメージを具現化しているという凝りようです。

また、絵の再現はストップモーションではなく、出演者が動きを止めるという演出もユニークですね。

中世ヨーロッパの様子にはなかなか触れることが無かったので、人々が暮らす様子は新鮮でしたし、処刑の様子は傭兵がムチで叩いたり、殴る蹴るでぐったりさせたあとは、貼り付けにしてカラスなどにつつかれて死ぬのを待つというなんとも痛々しい感じがしました。

ひとつの作品を紐解くとしたら、専門家のインタビューや関係者の証言等で構成されるドキュメンタリーのような作品を外側から掘り起こしていく手法もありますが、作品の中の世界からひとつの絵を紐解いていくという発想はなかなかに面白かったです。

ブリューゲルを演じるのは“ブレードランナー”のレプリカントの印象の強いルトガー・ハウアーです。それから年月も経ってイメージも変わった貫禄のある役柄でした。

おすすめ度:★★★☆☆

2012年02月18日 シネモンド(金沢市)にて鑑賞

新潟では新潟・市民映画館シネ・ウインドにて3月に上映の予定です。

原題:The mill and the cross
監督:レヒ・マジュースキー
脚本:レヒ・マジュースキー、マイケル・フランシス・ギブソン
出演:ルトガー・ハウアー、シャーロット・ランプリング、マイケル・ヨーク
2011年 ポーランド・スウェーデン作品

リンク
“ブリューゲルの動く絵”公式サイト
ブリューゲルの動く絵@ぴあ映画生活

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