龍ヶ城七々々の埋蔵金1

主人公の八真重護(やまじゅうご)はわりと普通の高校生です。
家業をつぐのが嫌だと父親に反抗したばかりに勘当され、太平洋に浮かぶ学生特区として有名な人口島の七重島に島流しにされました。

重護は限られた仕送りで生活していくには家賃がとにかく安いアパートを探します。

紹介されたアパートは”収納アリの八畳1Kバストイレ別、テレビやパソコン、洗濯機その他もろもろが付いて、月々五千円ポッキリ”の物件でした。

七重島に上陸を許可され、アパートの部屋のドアを開けると、ベッドの上に腰掛けながらプリンを食べているなかなかに可愛い女の子と目があったのでした。

その少女は10年以前にその部屋で殺された少女の地縛霊で、なぜかモノに触れられる力があり、ネットゲーム三昧の生活を送っているのです。

その少女の名は”龍ヶ城七々々(りゅがじょうななな)”といい、生前はこの島を「誰でも夢を叶えられる島」に発展させる中心となったGREAT7の中心人物だったのです。

そして、七々々が世界各地から収集し、島のあちこちに散らばっている”七々々コレクション”探しが始まりますが、自己陶酔の激しい名探偵と名乗る少女がやたら重護に絡んだり、コレクションを狙う怪盗団の“祭”や重護の通う高校の冒険部が立ちはだかります。

ファミ通文庫のえんため大賞の8年ぶりの大賞作品とのことで読んでみました。(前回の大賞は2003年の“吉永さん家のガーゴイル(田口仙年堂著)”とのことでした)

主人公の周りのキャラが個性豊かなのと、物語のテンポがいいので面白かったです。

近頃の新人のデビュー作品としては、変な理屈っぽさや、無理なひねりや設定がなく(決して物語がベタすぎるということではない)読んでいて気持ちよかったです。

七々々も可愛らしくていいけど、犯人が彼女を殺した理由、コレクションはなぜあちこちに隠されているのかなど彼女にまつわる秘密もたくさんで、これからどんなコレクションが登場するのか、彼女にまつわる謎はどうやって明らかになっていくのか楽しみですね。

また、本人はいたって大真面目なのに、端から見ると天然ボケというか自己陶酔が強い自称名探偵の女子“壱級天災(いっきゅうてんさい)”のキャラクターが気に入りました。彼女もなにかと重護につきまといますが、彼女が解き明かそうとしている真実は何なのかも気になるところです。

勘の鋭い人は途中で重護の家業に気づいたのかもしれませんが、自分としては何の伏線もなく唐突な感じがしてしまいました。

主人公は周りのキャラのアクの強さで至って普通に見えちゃうのですが、今後父親との関係は良くなるのか悪くなるのかというのもちょっとした見所になりますね。

この巻は物語の世界観や登場人物の紹介を、コンパクトな宝探しの物語にうまく盛り込んだ、プロローグ的な感じがしました。

続刊も予定されているとのことですが、七々々と天災のどちらがラブコメのヒロインになるのかも気になりますし、“七々々マニュアル”を遺した今生霞先輩も登場しそうな気配もあって、楽しみです。

イラストは七々々と天災が特にかわいいのですが、表紙や口絵の出来が良いだけに、本文中のイラストはちょっと物足りなかったかなという感じがします。物足りないというのはビジュアル的な話ではなく、数の話ですよ。

2012年02月08日読了

おすすめ度:★★★★☆

龍ヶ嬢七々々の埋蔵金1 (ファミ通文庫)
鳳乃一真 (著), 赤りんご (イラスト)
エンターブレイン ファミ通文庫刊
2012年01月30日発売

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