マイウェイ 12,000キロの真実

“対立するものの間に友情が育つまでには長く険しい道のりが必要なのか”

第二次世界大戦中にノモンハン→シベリア強制収容所→ノルマンディと舞台を移しながら、日本、ソ連、ドイツと3国の軍服を着た日本人と朝鮮人の数奇な運命を描いた物語です。

カン・ジェギュ監督は、ドイツ人の兵士と一緒にドイツの軍服を着た朝鮮人が写っていた写真や実際にドイツ軍に従軍した朝鮮人からのインタビューを基にこの映画を考えたということです。

時代は1928年、日本占領下の朝鮮・京城(今のソウル)。豊かな生活を送る少年長谷川辰雄(オダギリジョー)は、尊敬する軍人である祖父の家で使用人として雇われた少年ジュンシク (チャン・ドンゴン)と出会う。走ることが得意な二人はよく競争していました。

日本は戦争に向かい、朝鮮人の反日感情が高まっていく社会の中で、辰雄の祖父の家では辰雄が競技会で優勝したお祝いのパーティーが開かれていました。そこに、陸軍大臣からの賜り物と届いた小包には爆弾が入っていて辰雄の祖父は死亡します。

辰雄とジュンシクはロンドンオリンピックの代表選考会に出場します。ジュンシクは一位でテープを切ったものの、途中日本選手からの妨害を受けてやり返したことから失格となり、ジュンシクだけではなく観客の朝鮮人は暴動を起こしてしまいます。しかしこの暴動に加わった朝鮮人は日本軍の兵士として戦場へ送られることになりました。

ジュンシク達はノモンハンへ送られ、そこに指揮官として辰雄がやってきたのでした。辰雄はジュンシク達にソ連軍の戦車に特攻をするように命じます。しかし、ソ連軍の奇襲に遭い辰雄の部隊は全滅します。ジュンシクや辰雄など生き残った者はソ連軍に捕らえられ、シベリアの強制収容所で労働に従事することになり、そこから二人はまるで針の穴を抜けるかのような運命をたどります。

祖父の死で辰雄は朝鮮人へ憎しみの感情を抱くようになります。このことが引き金になったかのように、映画の中では日本人による朝鮮人差別がエスカレートしていきます。選考会でのジュンシクへの妨害が仕組まれていたらしいことや、日本軍では何かにつけて朝鮮人に因縁をつけ体罰を与える野田の態度など、観ていて本当に嫌になりますね。そんな憎たらしい野田を山本太郎はうまく演じていたと思います。

また、辰雄は皇軍の兵士として死ねることを名誉と思えと言い、戦場では死んでも撤退は許さないと退却しようとする兵士を自ら射殺します。辰雄の日本への盲信ぶりはもはや狂気としか言いようがありません。

しかし、そんな構図もシベリアの強制収容所に送られた途端に崩れ去ってしまいます。収容での作業班の監督はかつて部下だった朝鮮人であり、いままで受けてきた屈辱の仕返しを使用と日本人にきつくあたります。もう日本人の部下ではないと主張する朝鮮人、未だ皇国軍人だというこだわりを捨てられない日本人は対立していきます。

ジュンシクは辰雄に俺たちはお前の部下じゃないと殺し合い寸前の喧嘩になりますし、作業班の監督の朝鮮人は友人が食料庫でパンを盗み食いしたことをかばおうとせず、彼をそのまま処刑台へ送ります。ここまで過酷な状況になると、社会や軍での上下関係や民族間の対立、戦争の被害者加害者,友人などという関係は何の意味も持たなくなり、価値観の全ては生きるか死ぬかしかなくなってきているように思います。

ドイツ軍がソ連へ侵攻してきたことをきっかけに収容所の人々はソ連軍の軍服を着るかその場で射殺されるかを迫られました。

ここで死ぬことよりもソ連兵になることを選んだ辰雄の心はこのときに大きく変わったように感じます。もうこうなってしまっては皇国軍人という言葉は何の意味もなくなってしまいます。人数分の銃もないのに無謀な突撃を命じられる場面で、野田はかつての上官であった辰雄から“俺は生きたいんだ”と無理やり銃を奪い取ります。

また、絶望的な突撃を命じるソ連軍士官にかつての自分を見た辰雄は皇軍の名誉などよりも生きることにしたたかになったかのように心変わりします。突撃を命じ、後退しようとする兵士を銃殺するソ連軍士官は戦死しますが、個人的な想像では辰雄に撃たれたのかもしれません。

奇跡的に生き残ったジュンシクと辰雄は、ドイツ兵の遺体から軍服をはぎとり、山を越えてドイツを目指します。しかし傷を追って動けなくなった辰雄は、薬を探しに行ったジュンシクとはぐれてしまい、次に再開したのはドイツ兵としてノルマンディの陣地の建設現場でした。ジュンシクは辰雄と初めてあった時に競争相手ができて嬉しかったと語り、二人は生きて故郷に帰ろうと決意します。

ですが、連合軍のノルマンディ上陸作戦による苛烈な攻撃を受けて、二人の運命は引き裂かれてしまいます。

 

カン・シェギュ監督はこの映画と韓国と日本の関係について以下の様に語っています。

“戦争というのは、誰かが仕掛け、一方で被害を受けた人たちがいる。そして最後は勝者と敗者が残るわけですが、その末路は、誰もが心に傷を負った敗者なのではないでしょうか。
戦争を通じて人間の本質を確認する―、そんな映画にしたいと考えています。
もちろんこの映画も、戦争の加害者と被害者を主人公に物語が出発します。しかし、物語が進むにつれて、それは何も意味がないことだと分かってくると思います。
この映画の中に私の戦争への見解はありません。両国どちらかの見解で描くのではなく、それ以上にもっと成熟した映画にしなければならないと考えているからです。人間を理解し、その良さを発見していく過程を描いた映画なので、誰かを非難することに焦点を当ててはいません。日韓の問題は度々起こりますが、未来では友好関係を結ばなければならないと思っています。 ”(公式ホームページから引用)

この映画の中に善悪があるとすれば、辰雄は悪人で、ジンシュクは良き人と描かれているように見えます。憎しみ合っていた二人が生きることにしたたかになり、お互いを理解し、友情を築くにはとても過酷で長い旅が必要だったのでしょうね。

この映画は約2時間半と割りと長めですが、人物描写や物語の展開、迫力ある戦闘シーンなど手を変え品を変えた見せ場が次々にあり、まったく間延びすることがなかったです。監督・脚本のカン・ジェギュは日本が韓国映画に注目するきっかけになった(と個人的に思う)「シュリ」の監督・脚本も手がけていたのですからそれも納得です。

狂気から生きることにしたたかになっていく辰雄を演じたオダギリジョー、厳しい状況の中でも自分の夢を捨てずに生き延びようとしたジュンシュクを演じたチャン・ドンゴン、この二人の演技は見事でした。

確かに戦争は悲痛であり、被害者も加害者もどこかに心の傷を負うものだと自分も思います。また戦争責任についてもどこかではっきりさせる必要もあるとは思います。韓国と日本の間の問題を解決するにこれらの問題は避けて通れないものとは思います。

でもこの映画では戦火の中で絶望的な状況に追いやられ、そこから生きる希望を見出そうとしていく2人の姿に注目して欲しいと思います。

 

2012年01月15日 T・ジョイ新潟万代にて鑑賞

見所満載度:★★★★★

原題:마이웨이
監督:カン・ジェギュ
脚本:カン・ジェギュ
製作:カン・ジェギュ、キム・ヨンファ
2011年 韓国作品

 

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