“若紫” ヒカルが地球にいたころ……(3)

謎の死でこの世を去った美少年の帝門ヒカルは幽霊となり、見た目はヤンキーの赤木是光にとりつき、自分の心残りを叶えて欲しいと頼みます。女の子に接することに慣れていない是光はヒカルのために必死にヒカルの頼みごとを叶えようとするシリーズ第3段です。

ヒカルの次なる心残りとは、9歳、小学四年生の美少女の紫織子(しおりこ)でした。ヒカルは紫織子のことをしーこと呼んでいました。しーこは両親をなくし祖父と二人暮しです。

見た目は線が細くかよわい雰囲気のしーこですが、生きていくためには良い人でいてはいけないと思い込み、かつて住んでいた家を取り戻すことと、父のことの復讐を目的に大物を狙った“雀狩り”を企みます。

しーこのお祖父さんは心臓が弱く入院してしまい、その間是光はしーこを家にあずかります。是光の祖父の正風と叔母の小春はしーこを家族同様に迎え入れてくれます。

残念ながらしーこのお祖父さんは亡くなってしまいますが、お祖父さんは痴呆が進んでいてしーこのことを娘だと思っていましたが、最後にしーこのことを口にしたところはせつなくなりました。

今までの是光はヒカルに頼まれたはいいもののどうしていいのかわからず、とにかくガムシャラって感じでしたけど、この巻では是光が自分自身が相手の女の子のために何かしてやりたいという意思が感じられるようになりました。例えばしーこと一緒に寝たり、書道をしたり、終盤のヒカルの言葉を是光が自分の言葉に置き換えて話すところなどがそうだと思います。

是光の優しさでしーこの虚勢は少しずつ弱くなり、子どもらしくなり是光になついていきますが、父親の復讐と家を取り戻すことは諦めきれなかったようです。その気持をずるがしこい大人たちに利用され、しーこはピンチに陥ります。

目的のためにしたたかな心の強さを持つしーこですが、やはり心細さを抱えた弱々しさを顕にするところは子どもらしですね。

最後にヒカルの願いを叶えるというより、是光自身がしーこを救いたいと駆けつけるところはかっこよかったです。また、今回は是光とヒカルだけで事を解決するのではなく、葵や朝衣、帆夏も是光に協力するというのもよかったです。

高校では是光にロリコン疑惑の噂が蔓延し、前の巻で是光に“---あたし---あんたのことが、好きみたい”と告白した帆夏は、是光をロリコンから矯正させようとカラオケボックスに呼び出します。ミニスカートで是光にエロ本を見せて、うわずったこえで「このお尻、ぐっとくるよね」とか言ってる帆夏。めちゃめちゃけなげで可愛らしいじゃないですか。ちなみに扉のカラーイラストとP156のイラストはいかにも恋する女の子って感じで、破壊力抜群ですよ。彼女のキャラは“文学少女”シリーズの“ななせ”とかぶるところがあるのですが、なんとか思いが成就するといいですね。

この物語はいつも引きが強い終わり方をしますね。

夕雨がヒカルから聞いたという話、そしてヒカルの代わりに是光がしーこにした話にどんな秘密が隠れているのか、しーこの家の庭でみかけたヒカルに面影の似た女性はいったい誰でどんな秘密を持っているのか、ヒカル自身のことへの謎も深まります。

今回裏でいろいろ情報を入手し、是光がしーこを救えるようにはっぱをかけた朝衣も何か秘密がありそうですし、朝衣や葵を追い掛け回している報道部のひいなにも何かありそうですね。

そして最後に帆夏に恋のライバルが出現してラブコメにも期待が高まりますね。

また、冒頭と終わりの誰の独白なのかわからない一節は、どんどん謎めいていくとともに、ドキドキさせられます。

しかし、しーこの可愛さにヒカルが身悶えするところはドン引きですねぇ。犯罪者になる前に幽霊になってよかったとか思っちゃいますよ。

2012年1月1日読了

“若紫” ヒカルが地球にいたころ……(3)
野村 美月 (著), 竹岡 美穂 (イラスト)
エンターブレイン ファミ通文庫刊
2011年12月26日

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