ミスター・ノーバディ

“常に選択に迫られる人生を美しい映像とSFチックな甘くせつないラブストーリーで描きます”

今年の春先のこの映画のことを知って、何かピンと来るものを感じていました。新潟での上映は決定していないというのに前売り券を買ってずっと持っていました。

そして、ついに新潟で本日(12/10)公開となりました。

舞台は2092年。細胞の再生が永久に行えるようになった人間は死ぬことのない世界です。

その中で注目を集めるのは世界でたった一人死ぬことの出来る人間で、世界最高齢117歳の“ニモ・ノーバディ”です。

彼について誰もその過去を知ることは出来ず、本人も自分の過去は覚えていません。

彼の死をの瞬間を世界が見届けようとしている中、とある記者がニモを訪ねてきてインタビューをします。ニモは人間が死ななくなる前の世界のこと、そして彼の過去のことを思い出しながら話し始めます。

しかし、彼の話す過去は断片的で、ことの結末も曖昧です。しかも一貫性がなく矛盾してばかりでなのです。

人間の人生で分岐点はいくつもあります。その中で選択できるのは1つだけです。でも、時にはその別の選択をしたらどうなっただろうか考えてみたり、選択したことを後悔しながら人生を積み重ねていきます。

そして、時間を巻き戻してあの頃にもどれたらなって誰もが思うと思います。

自分はこの映画を観る前までは、違う選択をした人生がパラレルワールドをニモが行き来しながら歳をとって、記憶が曖昧になるのかなと想像していました。

ところが、この映画は全ての分岐が同じ時間、同じ世界に同時に存在しているというなかなか大胆なストーリーです。

具体的にはニモが子供の頃の両親が離婚するときにどっちについていくか?この女の子に告白するかどうか、別の女の子から声をかけられた時にどう返事をするかなど彼の人生は異なってくるのですが、それぞれ違う人生を送る全てのニモがいるのです。

また、何人ものニモが同時に存在しているというだけでなく、あるニモがとった些細な行動が別のニモにショックな出来事をもたらすというのが物語を面白くしています。

例えば、ニモが安いジーンズを買ってしまったために、ジーンズ工場で働いていた人は失業し、彼が卵を茹でると気温が上がって、別のニモのところに雨を降らせ、その雨は奇跡的に再会できた彼女から渡された電話番号のメモのインクをにじませ、その彼女とのつながりが途切れてしまうなどです。(いわゆるバタフライ効果というものです)

また、話のバックボーンには、ビックバーンで宇宙が誕生し、膨張することで時間が生まれ、やがてエントロピーを迎え、それが終焉するとビッククランチ(宇宙が収縮する)が始まり、そのビッククランチで時間はどうなるのかというのがあります。

バタフライ効果と宇宙の物理学が甘美な恋を翻弄し、ちょっとせつないラブストーリーとなっています。

三人の女性との恋物語はどれもいいと思いますが、やっぱりニモとアンナ(ダイアン・クルーガー)のラブストーリーはロマンチックでいいですね。

ストーリー以外にも見所はたくさんあります。

一つ映像です。時にはブレード・ランナーや2001年宇宙の旅を思わせるような人工的というあ無機質であり、時にはロマンチックであり、時には現実的、時には幻想的と、多彩なものになっています。しかもどれが美しいものになっています。

次に、ニモを演じたジャレッド・レトの多彩な演技です。特殊メイクで117歳のニモや回想の中に存在する何人ものニモを一人で演じ分ける変貌ぶりは見事でした。

そして、音楽も大変バリエーションに富んでいました。オリジナルのサウンドトラックの他、ところどころ流れる“ミスター・サンドマン”はいろんなアーティストの演奏を使っていますし、ユーリズミクスの“スウィート・ドリームス”やネーナの“ロック・バルーンは99”などちょっと懐かしいポップチューンも流れますし、バッハやサティ、フォーレ、ブリテンなどクラシカルな曲も多用されています。こうした多彩な音楽を使うことで多様なニモが存在するということを演出しているのかなと思います。

映画で使われたトラックかどうかわかりませんが、劇中やエンドロールで流れるThe Chordettsの“ミスター・サンドマン”をどうぞ

最後にニモの存在とはどういうものかが語られ、彼の死と同時にビッククランチが始まります。ラストをどう感じるかは人それぞれですが、僕はニモのしてやったりというような爽快感を感じました。

人生は自動販売機でどのボタンを押すかという日常の些細なことから、どんな仕事につくか、どんな人と結婚するかなど重要なものまで常に選択を迫られているように思います。

ニモは“選択しなければすべての可能性が残る”と語りますが、選択しなければしないなりにまた別の場面で選択を迫られることになると思います。

結局人は選択に直面しながら日々を送っているのですが、選択そのものにいいも悪いもなく、選択した後でどうしていくかが大切なのかなと感じます。

 

とにかく本当に面白い映画だと思いました。これまでにないストーリーや美しい映像など、僕の中では未来世紀ブラジルやブレード・ランナーと肩を並べるくらいの名作といえるでしょう。

 

2011年12月10日  新潟・市民映画館シネ・ウインドにて鑑賞

おすすめ度:★★★★★(でも足りないくらい)

新潟ではもうやらないのかなとほぼ諦めていましたが、シネ・ウインドさんGJです!
本日最後の上映だったので、終了後シネ・ウインド支配人の井上支配人と二言三言でしたが、この映画を観られてとてもうれしかったと話ができてよかったです。いつも上映前に彼が今後のおすすめ作品を前口上してくれるのもこの映画館の魅力でもあります。

 

原題:MR.NOBODY
監督・脚本:ジャコ・ヴァン・ドルマル(トト・ザ・ヒーロー、八日目など)
出演:ジャレッド・レト、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リン・ダン・ファン、リス・エヴァンス、ナターシャ・リトル、トビー・レグボ、ジュノー・テンプル、クレア・ストーン、アラン・コルデュネル、ダニエル・マイス、他
音楽・オリジナルスコア:ピエール・ヴァン・ドルマル
音楽監修:ヴァレリー・ランドン
2009年 フランス・ドイツ・カナダ・ベルギー作品

 

リンク

ミスター・ノーバディ公式サイト
ミスター・ノーバディ@ぴあ映画生活

 

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ミスター・ノーバディ [DVD]

せっかくの美しい映像なのでできればBlu-rayを発売してほしですね。

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