囮物語

 “映画でいえばエンゼル・ハートやブラック・スワンのような衝撃な展開と結末です”

この物語の主人公の千石撫子(せんごくなでこ)は中学2年生のこれといって特徴や特技があるわけではなく、おとなしめで可愛い女の子です。

この物語の数ヶ月前に撫子は恋愛がらみからクラスメイトに呪いをかけられ、それを解くために山中の誰もよりつかなくなった神社で蛇を捕まえて殺しますが、呪いを解くどころか蛇の怪異に巻き憑かれてしまい、阿良々木暦と神原駿河に助けられます。(化物語でのお話)

この物語はある日学校の下駄箱から白い蛇が出てくるところを見てしまいます。そして白い蛇は撫子に腕輪のようにとりつき、撫子に“自分の仲間を殺した償いに自分の死体を探して欲しい”と頼み、撫子は毎夜あちこちに探しに出かけます。

 

展開とオチが衝撃的でどう言葉にしていいのか悩みました。映画で言えばちょっと古いけどエンゼル・ハートや最近のものではブラック・スワンを観た時のような感覚です。

“撫子”の意思と離れたところで“私”がどんどん怪異になっていくことに、しかたないよねと理由を作って自分自身を納得させようとする撫子が痛々しいです。

文章のところどころにちょっと難しい漢字が『ひらがな』で書かれていますが、これは撫子が自分のことが可愛い、あるいは自分は可愛いと装っていることを表しているかのように思います。

“撫子”の妄想で作られていたストーリーと実際に“私”がとっていた行動が違うことは行き過ぎにしても、都合の悪いことを自分のいいように解釈したり、見なかったことにしたりは事の大小はあっても誰にでもあることだと思います。

阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎが付き合っていることへの嫉妬が妄想を自分がコントロールできないまでに加速させ、後戻りができなくなったところには自我を忘れてしまうという怖さがあります。

月火が撫子に可愛いことについて問い詰め追い込んでいくところは圧巻でしたが、“私の次に”とか撫子が“撫子が可愛くなかったら友達にはなってくれなかったのか?”という問をはぐらかしちゃうところは怖いですね。

阿良々木暦の“千石が絶滅したらどうするんだ”という台詞は撫子を心配してのことなのか、それともやっぱりロリなのか悩むところですが、懸命に撫子の苦しみを受け止めて救おうとしたのにもかかわらずこんなことになって暦もかなりショックだったのではないかと思います。

最後に撫子と話をした戦場ヶ原ひたぎの覚悟の強さはいかにも彼女らしい感じがしました。

 

囮物語 (講談社BOX)
西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト)
2011年6月29日発売

2011年11月7日読了

コメントを残す