東雲侑子は短編小説をあいしている

“曖昧な距離感、もどかしさに甘酸っぱさを感じます”

 著:森橋ビンゴ イラスト:Nardack

 エンターブレイン ファミ通文庫

2011年9月30日発売

 主人公の三並英太は特に熱中する物事もなく無気力に日々を送る高校生です。

彼の学校では全員部活か委員会に入らなければならず、英太は楽そうだからという理由だけで図書委員になりました。

東雲侑子(しののめゆうこ)は物静かでいつも本を手にしていて、英太と同じクラスで図書委員をやっています。

委員会の仕事で英太は手にした文芸誌をパラパラとめくり、そこに東雲侑子と思われる作家(=西園幽子)の写真が掲載されていました。

侑子は自分が作家であることは隠しているのですが、秘密を知ってしまった英太は彼女との違いにショックを受けながらも彼女との距離を縮めていきます。

 侑子が書く小説は短編ばかりで、担当の編集者からは長編を書いてみないかと声をかけられます。侑子は長編を書くにはいろいろ調べないといけないからと、英太に擬似カップルになってほしいと頼むのでした。

 

真っ先に言っちゃいます。

“こういう作品めちゃめちゃ好きです”

ライトノベルのラブコメといえば、ドタバタだったり、ぶっ飛んだ設定だったりしますけど、この作品はそういう傾向のものに比べると極めて普通(女子高生が隠れ作家をやっているのが普通かどうかはさておき)な設定です。

 

恋愛をしたことがない侑子は微妙に距離を取ろうとする侑子は透明な感じがしますね。

付き合うといっても何をしたらいいのかわからないという英太(彼女いない歴=恋愛、兄の彼女に恋心を抱いていた時期もあった)の不器用さも初々しいです。

曖昧な関係や不器用さ、もどかしさがかえって甘酸っぱい恋物語にしていると思います。

また、英太の勉強もスポーツも優秀で自分の初恋の相手を彼女に持つ兄に対する劣等感や、兄の部屋にあった小説が侑子の好きな作家の作品だったことがきっかけで、もしかしたら侑子は自分ではなく兄の方に気が向いたのではないかと焦るところなんかはいかにもその年頃らしいなと思います。

英太の気持ちは地の文などにも出ていますが、侑子の気持ちは文字にはなっていないのでとらえどころがないかも知れません。

彼女の気持ちは状況の描写や思わせぶりなところがない言葉で、繊細な心の変化をうまく表している文章になっていて、森橋ビンゴ先生はうまいなと思います。

英太も彼女が好きだという気持ちに気づいたけれども、今の関係を壊したくないのか、うまく伝えられないもどかしさは甘酸っぱいですねー。

各章の冒頭には西園侑子の短編小説が細切れで掲載されています。これは物語を呼んでいるうちはあまりよく分からなかったのですが、読み終わってから読み直すと、侑子の気持ちがより分かるという仕掛けもにくいですね。

結末はちょっと物足りないような感じがしますけど、このくらいのほうが二人の関係の曖昧さをうまくたもっていていいのでしょうね。

実は表紙買いしたといっても過言ではないくらい、Nardack先生の侑子のイラストは正直好みです。表紙はともかくとびらとか267ページとか、萌えどころ満載です。

この話はこれで終わりなのだと思いますが、続きが書かれるとすれば、英太の生殺し物語になるかもしれないですね。

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