BIUTIFUL(ビューティフル)

【あらすじ】

スペインのバルセロナで妻と離婚し、子ども達と暮らすウスバル(ハビエル・バルデム)。彼はアフリカや中国からの不法就労者に仕事の世話をするブローカーでなんとか生計を立てています。しかし、彼の仕事は犯罪すれすれ(もしくは犯罪そのもの)だったりで、トラブルに巻き込まれる日々が続いています。また、彼は死者を心安らかに送り出したり、死んだ人からのメッセージを遺族に伝えることも仕事にしています。

体調がすぐれないウスバルは病院で診察を受け、ガンと診断されます。余命は2ヶ月と言われたウスバルは、子どもたちと一緒に妻の家に住んだり、不法移民の労働者が少しでも暮らしやすいようにしたりと奔走します。

 

【感想】

大変に懐の深く、なかなか感想を言葉にするのが難しい作品です。

不法就労者の夫が逮捕され国に強制送還され、その妻は「金を稼ぐためにここにいるのであって、本来ここには自分たちの居場所はない」と語ります。不法労働者という以前に、異民族であるが故に社会の中に居場所はなく、ごくわずかな金だけを拠り所にして生きて行くというのは自分にはわからない厳しい世界ですね。

不法就労者が逮捕されないようにと警察に賄賂を渡したのに労働者が逮捕・強制送還されたり、中国人労働者が寒くないようにとガスストーブを自腹で買い与えたのにガス中毒で死んでしまったり、子どもたちのためと思い妻と一緒に住み始めたのに妻が子どもに暴力をふるい一緒にいられなくなったり、とウスバルのやることは全て裏切られてしまいます。

失望の連続とともに、不法労働者を不幸な目に遭わせてしまった罪悪感、自分に迫ってくる死への恐怖、父親の顔も知らず幼くして母親を亡くしたことから家族の愛情へのとまどい、などに押しつぶされそうになる様子は彼に救いはないのかと思うほどです。そういう苦しさと向き合うことも生きて行くということなのではないかと思います。

この映画はウスバルの顔のアップが多く使われます。生きる辛さにもがき苦しみながらも優しさを含んだ表情はとても惹かれます。

映画の展開は淡々としていて、登場人物の息遣いや衣擦れまでが聞こえてくるくらい空気が張り詰めています。しかし、映画が始まってまもなく不思議とそんな雰囲気に取り込まれてしまい、わりと長めの2時間半の上映時間も飽きることなく過ぎてしまいました。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の手腕はすごいですね。

冒頭とラストのシーンは雪の中でフクロウの死骸のアップから始まります。そして、ウスバルが出会った人物(多分、ウスバルの父親)は「フクロウは死ぬときに毛玉を吐き出す」と話します。これは劇中にウスバルの息子が父親に投げかけたセリフなのです。あとで知った話ですが、フクロウは欧米では幸せを象徴するもののようです。フクロウの死骸は失意や失望を表していて、毛玉はウスバルやウスバルの父が家族に遺すことができたも記憶や思い出なのではないかと思います。

2011/08/28 ユナイテッド・シネマ新潟で鑑賞

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