とある飛空士への夜想曲 上(ライトノベル)

 とある飛空士への夜想曲 上

犬村 小六 (著), 森沢 晴行 (イラスト)

ガガガ文庫

2011年7月20日発売

 

 

レヴァーム皇国の飛空士“狩野シャルル(通称海猫)”は次期皇妃を水上機に乗せて“中央海単機敵中翔破、一万二千キロ!”を誰にも知られることなく成し遂げました。その翔破の最中帝政天ツ上のエースパイロットの“千々石(ちぢわ)武夫(通称ビーグル)」は海猫に一騎打ちを挑み敗れました。(これが“とある飛空士への追憶”のお話)

この物語は、千々石が少年時代に出会った歌手を目指す少女“ユキ”と出会、飛空士を目指す物語、レヴァーム皇国と帝政天ツ上の戦争の中、繰り返される出撃の中で“海猫”との再戦を求める千々石の様子が描かれています。

 

【千々石の少年時代】

両親を失った千々石は学校に通わず炭鉱で働く少年でした。

仕事がおわるとその日の食料を買って飼い犬(ビーグル犬)と分け合うという日々を繰り返していました。

そんなある日どこかから聴こえてきた歌声を追い求めて街を駆けめぐり、出会ったのが歌手を目指す少女ユキでした。

ユキは夕方になると丘の上で歌の練習をしているのでした。

ユキが歌の練習をする脇で千々石は予科練に入るための勉強やトレーニングを始めます。

二人それぞれが夢に向かって今なすべきことに没頭する様子、千々石が予科練に入れるように自分の歌の練習を休んでまでも千々和を支えるユキの姿、そして二人が交わす約束は真っ直ぐで清々しく感じました。

 

【エース千々石】

予科練を卒業し飛空士となった千々石は次々に撃墜し、エースの才覚を表していきます。

千々石は昇進よりも空で一機でも撃墜することに固執します。

千々石がエースたる所以は訓練や実践で身につけただけではなく、他の誰かが持ち合わせていない勘です。

しかし、何機撃墜しようと千々石の欲求が満たされることはありません。彼は砂漠に水を撒くように、ひたすら海猫の姿を求めて戦場を駆けます。

千々石が最前線の基地に送られたときに、帝政天ツ上の歌姫と呼ばれる“美空”が基地にやってきます。 美空は千々石の操縦する飛行機に載せてもらうことを切望します。 そして、二人の遊覧飛行のときに千々石は自分の想いを伝えます。

千々石の想いとは自分が空を制するためには、他のことは全て切り捨てるというものです。

緊迫感ある空戦の描写は説明臭くならず、なおかつ千々石の戦いへの執念やエースの才覚が感じられるところは作者のうまさを感じます。

この先海猫との再戦や美空のことがどうなるのか盛り上がったところで物語は下巻に続きます。

 

この物語の元となったのが“とある飛空士への追憶”なのですが、こっちも大変に面白かったです。8月には加筆された新装版が発売されますし、秋にはアニメ映画が公開されます。既に物語を読んで内容を知っているとはいえ、今からとても楽しみです。

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